投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

dream・road
【青春 恋愛小説】

dream・roadの最初へ dream・road 21 dream・road 23 dream・roadの最後へ

dream・road〜scene-2nd-1

ここはアメリカ、ニューヨーク。
港近くの公園で、船着き場に停泊した観光船を眺めている一人の少年がいた。

少年の名は、御堂 龍矢(みどう たつや)。ボクシング王者を目指し、単身アメリカに渡ってからもう一年を迎えようとしていた。

(早ぇな…)

公園を後にしながら龍矢は、今までのことを思い出していた…。


子どもの頃に描いた夢を追い掛けるために、龍矢はアメリカに渡った。

夢への道も開き始め、様々な経験が彼を成長させてきた。
だが、現実はそう甘くないことも思いしらされた…。


龍矢は仕事場のカフェの扉を開けた。まだ開店前なのだが、店の中には最近のジャズナンバーが流れ、いつでも開店出来る状態になっている。

「おうタツヤ、怪我は大丈夫なのか?」

グラスを拭きながら、マスターのダニーが龍矢に問掛けた。

「あぁ、もう大丈夫だよ。明日からは仕事にも出られる」
「そうか。ならいいが…最近調子悪いのか?」
「…いや、そういう訳じゃないんだけどさ…」

ダニーが龍矢に聞いたのはボクシングの調子についてだった。


八戦六勝二敗五KO…。

デビュー戦から今までの戦績を見ると、KO率八割以上ということもあり十分強者に見える。が、最近は二戦連続で判定負けが続いていた。

龍矢自身、決して不調というわけではなかった。むしろ一年前よりも体は鍛えあげられ、筋力も敏捷性も格段に上がっている。

「んじゃ、また明日から来るよ」
「おう。気を付けろよ」



ダニーの店を出て、龍矢はロードワークの時に通る公園へとやって来た。

おもむろに腕を上げ、シャドーボクシングを始める。
切れのいい拳の音を出しながら、龍矢は最近のことを思い出していた。

《しばらくジムには来なくていい…》

試合の翌日、ジムでトレーナーのミゲルが出した言葉は、龍矢に少なからずの動揺を与えた。

「な、なんでだよミゲル!」
「…自分で考えろ…」

ミゲルはそう言い残すと、ジムをを出ていってしまった。

ジムトレーナーでもあるミゲルの命令は龍矢にとっては絶対だった。

龍矢はデビュー戦から、ほぼ一ヶ月あるかないか程のハイペースで毎試合を消化してきたのだ(現在と違い、昔は試合間隔が無茶苦茶なこともあった)。

常人では考えられないようなハードスケジュールは、知らずのうちに龍矢の体にもダメージを蓄積させていた。


dream・roadの最初へ dream・road 21 dream・road 23 dream・roadの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前