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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 行進 〜-2

 ここまで考えてフト気づいた。 たかが一生徒に気を遣うなんて、随分久しぶりではないか。 思わず笑顔を引っ込めて真剣に考えてしまっているではないか。
 チラリと22番を一瞥する。 

(要するに、貴方が耐えてくれるなら、できれば貴方に任せたいんだけど)

 22番は相変わらず見事な作り笑顔だった。 と、真面目なわたしと視線がぶつかる。 22番はハッとした様子で一瞬目を開いたものの、次の瞬間には笑顔に戻る。 
 
 そして、小さく頷いたではないか。

 思わずわたしも頷いてしまった。 つられたことに気づき苦笑する。
 その意気や良し。 視線を避けるでもなく、俯くでもなく、正面から受け止めてリアクションをとったのだ。 勿論わたしの意図が通じたなんてあるわけないが、逃げようとしないだけで十分だ。 わたしがやりたいように――つまりクラス全体のためになるように――やらせてもらおう。
 
「9番、10番、足が低い!  25番、27番、足が高すぎ! 腿を水平でピタっと止める!」

 ビッシィッ。 鞭を握る手に力がこもる。 短い鞭が22番の太ももに撓って、真横に薙ぐ。

「ハイ! だらしない足をしっかり止めます! ありがとうございますっ」

「8番、笑顔がぬるいっ」

 ビシッ。 今度は加減しつつ、22番の横っ面に。

「ハイ! 醜い笑顔で恐縮です! ご指導ありがとうございますっ」

「そこっ。 14番っ。 手をあげるときは肩から水平! さげるときは地面に垂直! 手の振りが大きすぎ、みっともないっ。 ちゃんと考えて動かしなさいっ」

 ビシッ。 何発目だろう、乳首正面にピッチリと鞭の痕がつく。

「ハイ! 見栄えよいよう、足りない頭で考えます! ありがとうございまぁす!」

 『踵をつけず、爪先で歩く』『手は軽くにぎる』『口は半開き』『顎はひく、顔はあげる』
 細かい注文のたびに22番がなにがしか絶叫する。 22番が叫ぶたびに、名指しされた生徒のみならず、他の生徒全員の動きがよくなってゆく。
 
 一通り指摘したところで、実際に行進させてみた。 下足棟前には一周50メートルほどの白線が引いてあり、行進練習にもってこいなのだ。 今の隊形のまま、左右揃ってスタートする。

「あそれ。 ワンツー、ワンツー♪」

「「わん、つー、わん、つー!」」
 
「先頭、もっと早く! そんな遅くちゃ間に合わないでしょ!」

 ビシッ。 先頭は常に22番。 乳房の下に鞭を這わせる。

「ハイ! お股ひろげて急ぎます! ご指導ありがとうございますっ」

 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

 時折鞭を入れながら10周させてみたところ、あっさり動きが揃ってくれた。 厳しい教官ならさらにダメを出すところだが、わたし的には十分OKだ。 みなが顔をあげ、視線は正面に向け、お互いの様子を伺い合う気配を見せずに歩調を揃えているのだ。 最初の行進でこれ以上求めることがナンセンスと思う。

 ピィー、ピッ。

「全体〜止まれっ。 第1姿勢で注目!」

「「ハイ!!」」

 即座に指定の基礎姿勢だ。 わたしは心の中で大きく頷いた。 細やかなことではあるが、全員揃うことは、何事に於いても難しい。 小さな同調を繰り返し、しっかり指示を聞く習慣を育ててくれればいい。 この体育がそのきっかけになれば、こんな嬉しいことはない。


 ……。


 引き続いて別の『行進』を指導した。 先ほどの『二足行進』に対し、次は『四足行進』だ。 人以外の振舞いを強制されることが多い学園では、二足で過ごす時間と同じくらい、四足で過ごす講義がある。 そういう時は、原則として膝を地面につけず、お尻を高くもちあげて歩く。 ただし行進は話が別だ。 全体の同調に何よりも重きをおく行進では、普通に両膝と両手の平をついた四つん這い、つまり『ハイハイ』の姿勢をとる。 進む際に気をつけるポイントは3つ。 
 
 『顔をあげ、上目づかいに斜め上30度を向くこと』
 『肩をいれ、気持ち背中を反らすこと』
 『まっすぐ進みながら、乳房を左右に大きく揺らすこと』

 特に3番目が難しい。 身体を左右に振れば簡単であっても、直接揺すらず手足の振動で揺らすのは生半でない。 2号のクラスも御他聞にもれず、乳房の揺れに指導を絞った。 その結果、22番の胸にさらなる鞭を15発ほど加えたところで、どうにか見られるようになった。

 さて、16時15分(わたしが受けもつ時間の放課時間)まであと少し。 
 行進の仕上げに、どうしても次のプロセスは欠かせない。 汗と砂で汚れた生徒を笛で止め、通常行進でついてくるよう指示をだす。 下足棟正面から、A棟の裏へと、約100メートル。 振り返ると、そこにいるのは笑顔で愚直に手足をふる、よく躾けられた生徒たちだった。


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