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野郎共のワールドカップ
【スポーツ 官能小説】

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終戦-2

ショックの敗戦から一夜明けた。
朝食の場に現れた代表メンバーだが、あまりよく眠れなかったようだ。
誰もが暗い顔をして覇気が全くない。
自力での予選突破が不可能になったとはいえまだ一試合残っている。
勝てば可能性は十分ある。
だがサポートメンバーとして代表に帯同してきた俺にはわかる。
もう彼らは戦えない。
心が切れている。
彼らのワールドカップは終わってしまったのだ。
このままではまずいと思ったが、俺には何ができるだろうか。
サポートメンバーとして何かできる事はないだろうか。
そして、みんな同じ事を思っているのだろうか。
無言でもくもくと食事を取る代表たち。
食べ終わったら者達は一度自室に戻って行った。

朝食の間、俺は一つ気になった事があった。
朝食から就寝まで、いつも代表を見ているフック監督の様子が普段と違っていた気がする。
本来は陽気なイタリアンなのだが、言葉を発することなくいつも以上に真剣な眼差しでサムライ達を見つめていた。
この時点では練習の予定は決まっていない。
昨日の試合後、フック監督はサムライ達のショックの大きさを知っていたのだろう。
イタリアの知将は常に代表を勝たせる事を考えてきた。
そのために常に最善の策を打ってきたはずだった。
だが、残念ながら結果は出ていない。
早急に対策をしなくてはいけない。
すぐに効果の出る劇的な方法で。
俺はこの名将を信頼している。
サムライ達は強い。
これまで幾度もピンチがあったが、この知将の手によって跳ね返してきた。
彼ならここからでもチームを立て直し勝利に導いてくれるはずだ。
朝食の時間が終わって部屋に戻った後、フック監督から呼び出しがあった。
代表とサポートメンバーが全員が集められた。
そしてそれぞれに一つずつ指示が出された。

代表メンバーの練習は急遽中止になった。
替わりにブラジルイトゥの地で好きな事をやれ、という指示が出た。
激戦の疲れ、特に精神面を考慮しての指示だろう。
良い指示だと思った。
サムライ達も少しは気分を切り替えてくれると期待したい。
サポートメンバーは代表が宿舎から出て行ったあと、フック監督の部屋に来るように指示された。
現段階では意図はわからない。
疲れ切ったサムライ達をサポートする作戦を授けられるのだろうか。
また真一さんと別行動になるのを心細く思いつつも、フック監督の策に期待している俺だった。
「誘拐には気をつけてくださいね〜」
「一人で行動したらダメですよ〜」
ブラジルの治安は悪い。
思い思いの言葉をかけ、俺達は代表メンバーを送り出す。
その後、俺達サポートメンバーの4人はフック監督の部屋へ赴いた。

ドアを開けると専属の通訳とフック監督が二人。
通訳一人にイタリアンが二人。
フック監督が二人いる?
俺達サポートメンバーは顔を見合わせた。
今、あり得ない事が起きている。
だが角田が一つの事に気がつく。
片方はフックじゃない。
それっぽいただのイタリア人だ。
二人のフックは笑いながら通訳が種明かしする。
「こちらの人はただのそっくりさんです。」
笑いを堪えながら教えてくれた。
しかしなんでそっくりさんがここに?
疑問に思った後に驚きの一言が通訳から衝撃が発せられる。
「残りの期間、この影武者に指揮を任せます。」
なん、だと?
「監督!なぜですか?これからどうするんですか?」
俺達が必死に問いかける。
そうするとフック監督が俺に近づき、身体をベタベタと触りだした。
こ、こんな時になにを。
やだ、この人、巧い・・・。
いきなりの行動に驚いた俺。
その行為をしている間、フックの瞳にはうっすらと涙を浮かんだ涙に気づく。
そのまま全身隅々まで触った後俺から離れ、他のメンバーにも触りたくる。
そして通訳に言葉を授ける。
「こんなになるまで、よく我々に仕えてくれました。感謝の言葉もありません。」
瞳に浮かんだ涙を隠すことなく言葉を続ける。
「我ら日本代表がここまで戦えたのは貴方がたのおかげです。しかし我々は結果を出す事ができませんでした。」
通訳の瞳も潤む。
偽フックは静かに頷きながら聞いている。
「日本のサムライの長は負けた責任を取り腹を切る風習があると聞きました。しかし私はキリシタン。自らの命を絶つ事は禁じられています。」
日本代表はサムライである事を重んじてきたが外国人監督はその範囲外である。
そしてサッカーで命を賭けるのはさすがに馬鹿げている。
監督がこんな事を考えているなんて思いもよらなかった。
「そこであなたがたを呼びました。最後の仕事です。私の命を絶ってください。」
そう言って俺達サポートメンバーに刀を渡す。
静寂が驚きに変わる。
だが、俺は途中から覚悟をしていた。
このイタリア人もまた、サムライなのだ。
日本代表の監督に就任したその時から、日本のために戦うサムライになっていたのだ。
「できません!」
角田が涙ながらに叫ぶ。
だが、ここまでの決意をした主君に恥をかかす訳にはいかない。
角田の言葉を他の3人で遮る。
サムライの歴史はこうやって培われてきた。
こうやって日本は強くなってきたのだ。
俺は涙を堪えながら覚悟を決めた。
「通訳さん、影武者さん、ここからは俺らがやります。」
サポートメンバー達は主君の意を汲み決意した。
二人は部屋から退出していった。



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