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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-1st-6

「…!!」
「マリア!?」

マリアは席をたつと、ホールの出口へと走っていってしまった。

「…まだマリアには刺激が強かったか」

ダニーは一人ぼそりと呟いていた。



1ラウンド終了のゴングが鳴った。
龍矢の動きにいつもの切れがない…ミゲルはうつ向いている龍矢を椅子に座らせ問いかけた。

「ボーイ…ビビってんのか…」

ミゲルは龍矢の顔を掴むと無理矢理引き上げた。しかし、龍矢の顔にはまだ闘志の火がその瞳に宿っている。


「ちげえよ。様子を見てたんだ」

…ミゲルは龍矢にクレバー(冷静)になれとは言っていないし、教えてもいない。
実戦…しかも初戦でそのようなことを行ったことに龍矢のボクサーとしての才能の片鱗をミゲルは感じた。

「…やりたいようにやれ」
「心配すんなよ。次で決めるさ」

インターバルが終わり、マウスピースを口にはめて龍矢は集中力をさらに高めた。

第2ラウンドのゴングが鳴り、相手が突っ込んでくる。どうやら大したことはないと思ったのだろう。

(容赦ぁしねえぞ…!)

龍矢は心のなかで呟いた。
目の前には相手が拳を放とうとしている。
龍矢は自分の本能を解放した。

ほぼ反射的に足が斜め前に進む。脚の筋力を最大限に使ったワンステップは、相手の右拳を避け、懐に潜り込んだ。
潜り込むと同時に右腕を限界まで折り曲げ、体を全力で左向きに振り回した。

ズバンッッ!!


足の、腰の、肩の、そして体全体の回転を加えた右拳が相手の顎を打ち抜いた。

拳に乗る確かな手応え。相手の顎が綺麗に横にずれた。
さらに体を戻しながら左の拳をみぞおちにめり込ませる。
相手の体が曲がり、顔が下がった。

(…決めてやらぁっ!!)

下がっている男の顔を拳で突き上げ無理矢理かち上げる。
相手の目はもう焦点が定まっていない。
男のその目を見て、龍矢は追い打ちを一瞬ためらった。


『相手の心の牙を折るんだ』

ズドンッ!!


ミゲルの言葉が頭をよぎった瞬間、龍矢はそのまま後ろに倒れようとする男の顔面に駄目押しの右ストレートを打ち込んだ。
弾け飛ぶ様に相手の体がリング中央へと倒れこんだ。
白いリングに男の浅黒い体が微妙なコントラストを生む。


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