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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-1st-3

「タツヤ!計量はどうだった?」
「大丈夫、パスしたよ」
『タツヤ〜!勝てよ〜!』
『そうだそうだ〜!』

子どもたちがそれぞれに龍矢に応援の言葉をかける。
龍矢は笑って子どもたちに応えた。

子どもたちとも別れ、マリアと二人で家路に着く。
他愛のない会話だが、龍矢の体からは緊張がにじみ出ていた。
普通の人ならまず気付かないであろう雰囲気にマリアは感付いていた。

「タツヤ…恐いの?」
「…なんで?」
「なんか、そんな感じがする…」

微かな雰囲気の違いにも気付くのも、彼女の才能の一つかもしれない。

「…勝つから大丈夫だ」
「無理は…しないでね?」

マリアは立ち止まると、龍矢の頭をなで始めた。

「なっ…なんだいきなり!?」
「ん、緊張を解くおまじない!リラックス、リラックス〜!ってね」

頭をなで続けるマリアの腕を龍矢は払おうとしたが、やめた。なんとなく気分が落ち着く…。
少しばかり肩に力が入りすぎていたのかもしれない。
マリアに頭を撫でられながら、龍矢たちは自分の部屋へと戻った。



その頃、夜にはバーになるダニーのカフェでは、ダニーとミゲルがカウンターで話をしていた。

「ミゲル…明日は勝てるのか?」
「闘うのは坊やだからな、どうなるかは知らん。が…」
「が…?」
「坊やの野生が解き放たれれば、負けはしない…」

そう呟きながらグラスを口に傾けるミゲルにダニーは驚いていた。

「珍しいじゃないか、ミゲル。お前が人を誉めるなんて」
「それ以外に見所がないだけだ…」

ダニーは知っていた。酒が入るとミゲルは本音を出してしまうことを。
その証拠に、ミゲルが好きなウィスキーのボトルは空になっていた。

「…まぁ明日になれば全て分かるさ」

ミゲルの言葉に何か確信のような、予感の様なものをダニーは感じた。



マリアは、眠ることが出来なかった。時計の針は大分前に12時を回り、今は微妙に空が明るくなり始めている。今日も朝早くから市場の仕事があるが、そんなことはマリアの頭から除外されていた。

マリアは不安で仕方がなかった。龍矢の前でこそ明るい振りをしていたが、その実、一人になると不安になってしまうのだった。

龍矢は約束は守ってくれる。マリアはそう思っている。だから明日の試合にはなにがなんでも勝つだろう。
だからこそ不安だった。もし、相手が途方もなく強かったら。もし、龍矢の調子が悪かったら…。
それでも龍矢は向かって行くだろう。自分の夢を叶えるために、周りの期待に応えるために。


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