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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-1st-2

マリアと別れ、龍矢は一通り練習を終えた。空はまだまだ明るく、日は沈んでも街の灯は消える気配を見せない。
龍矢はあてもなく街をぶらついていた。英語の会話にも慣れた最近は、街の地理を覚えるために色々な場所を散策しているのだ。

大通りを歩いていると、あるブランドショップが目についた。

(誕生日だって言ってたし、少し見ていくか…)

龍矢は中に入り、商品を見て回った。店の豪華な飾り付けにも参ったが、何よりも驚いたのが商品の高さだった。
とてもじゃないが、今の自分では手が届くわけがない。
値札を見て悩みながらも商品を物色していると、あるものの所で龍矢の視線は止まった。

それは長方形の、折り畳み式の手鏡だった。紅く煌めく手鏡の裏には、美しい蝶の模様が立体的に彫られている。
値段も確かに安いとは言えないが、頑張れば買うことの出来そうな値段である。
なによりも、煌めく紅い色がマリアのイメージにぴったりだと思ったのだ。

「すいません、この手鏡をとっておいてもらっていいですか?」

龍矢が店員に尋ねると、店員は快く頷いてくれた。

『では、何日にお取りに?』
「七月六日に来ます」

龍矢はそう言い残し店を出た。龍矢の頭の中には、手鏡代を稼ぐための考えが練られていた。



時は進み、七月の五日になった。
この日、龍矢は計量をパスした後自分が戦うリングを眺めていた。

「ここで、カイも…」

龍矢の頭に昔の思い出がよみがえる。
自分がまだ子どもだったころ、自分にボクシングを教えてくれた大切な人…。

「カイ…今どこにいるんだよ…」


龍矢は、幼い頃に流行り病で両親を亡くした。
親戚の家を転々とし、どこに行っても煙たがられていた。

もう家になんかいたくない…。

その時に、龍矢はカイと出会った。龍矢はカイの金色の頭が珍しく。毎日のように通いつめた。
カイも最初こそ相手にはしていなかったが、何日も来られるうちに自然とかまってくれた。
鮮やかによみがえる幼き思い出…。あの頃描いていた夢物語が、今自分の目の前に現実として存在している…。

ふと、ライトを見上げていた自分の視界が揺れていることに龍矢は気付いた。
膝をみると震えている…。不安のための震えか、それとも歓喜の武者震いか…。その答えは明日に出る。

「カイ…見ていてくれよ…!」

気持ちを引き締めるために、龍矢は天井のライトに向かって握り拳を振り上げた。


日も暮れ始め、龍矢が自分のアパートへと帰る途中、公園の売店で子どもたちとアイスを食べているマリアを見かけた。
マリアも龍矢に気付き、子どもたちと共に駆け寄ってきた。
よく見ると、マリアが朝働いている市場の子どもたちだった。


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