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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-1st-1

ここは、アメリカ・ニュ―ヨ―ク。
ある小さな建物から、サンドバッグを叩く小気味のいい音が聞こえる。サンドバッグを叩いている少年の名は御堂 龍矢(みどう たつや)。
ボクシング王者を夢見て単身アメリカにやってきた少年である。


「タツヤ!はい、差し入れ持ってきたよ!」
「おう。悪いな、そこら辺に置いといてくれ」

龍矢がいる場所は、少しさびれたボクシングジム。三ヶ月ほど前に龍矢が働いているカフェのマスター、ダニーから紹介されたミゲルという老人に龍矢は認められ、このジムの門を叩いたのだ。

龍矢に差し入れを持ってきた少女の名はマリア・セレンス。前に龍矢に色々と助けてもらい、知り合いとなった。
朝は市場で、夜は近くのシアターでバックダンサーとして働いている。

二人は、お互いに『夢』という共通の目標を持っているせいか、意気投合し、仲がよくなるまでに時間はかからなかった。
今ではすっかりマリアは龍矢になついている。

「ねえ、タツヤ!今日は時間があるから一緒に食べようよ!」
「あ?まぁいいけど…」
『二人とも、イチャつくなら外でやってくれや!』
『本当だぜ!』

ジムの仲間たちの冷やかしを受け、龍矢とマリアはそそくさとジムを後にした。


ジムは働き場所のカフェからそう遠くなく、公園も近い。
二人は大きな木の下に腰を下ろして昼食をとることにした。

マリアは一人で暮らしているせいか、料理が上手い。
サラダと鶏肉のサンドは、今度デビュー戦を控えている龍矢の体調管理を考えてのことだろう。
ミゲルに認められたあと、すぐにまともな練習もせずに受けたプロテストにもどうにか合格し、トントン拍子で試合が決まり、今は一週間後にデビューを待つ身である。

龍矢は空を見上げた。春の季節はもう過ぎ、木々は青々しい葉を揺らせ、陽射しを柔らげてくれる。
葉と葉の間から漏れる光に目を細めていると、マリアが突然話し始めた。

「ねぇ、タツヤ。試合の日って七月の何日だっけ?」
「六日だ。なんだいきなり?」
「ふふふ…実はボク、七日がバースデイなんだ!いいでしょ!」
「今年で何歳になるんだ?」
「シックスティーンだよ!」

龍矢は少なからず驚いた。まだ十五の年端もいかぬ少女が、シアターで働いていることに。
一人で暮らすマリアにとって舞台に立つのは、『夢』でありながらも、生きるための『手段』でもあるのだ。
子供が一人で暮らしていくにはこの街は、危険が多い。もし危ない所で下手を打つと、明日を迎えられないことにもなりかねないのだ。

だが、そんな街で素直で元気に生きているマリアを見ていると、龍矢はなぜか柔らかな気分になれた。
もしかしたら、この子には人を癒す天性の才能があるのかもしれない。

「ねぇ、タツヤが試合に勝ったらさ、ダニーの店でパーティしようよ!タツヤの勝利とボクの誕生日を一緒に!」
「ああ、いいよ。んじゃダニーに言っておきな」
「うん!」


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