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LADY GUN
【推理 推理小説】

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病んだ精神-5

 店内は結構賑わっていた。若者の姿が多く見られた。各テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいる。その割に半分以上残して店を出る客も目立った。
 「想像とは少し違いますね。」
色々不自由な生活を強いられていると思っていた若菜は料理を残して平気な顔で会計を済ませていく客を意外に思う。
 「良く考えれば駐車場に停まっていた車はみんな新しくて高級車が多かったな。しかも客はみんな若い。あまり苦しい生活はしていないようにも見えるな。」
 「確かに…。」
ちょっとしたカルチャーショックを受けた。ビールは飲む、煙草は吸う…むしろ贅沢三昧しているように見えた。
 2人のテーブルに料理が運ばれた。すると後ろの席に座っていた若者が店員にいちゃもんをつけた。
 「おい!そっちの客より俺らの方が先に注文しただろうが!順番おかしいんじゃねーのか!?」
大声で怒鳴り散らす。
 「お客様…、お料理によって時間が異なりますので順番が多少前後する事があるんです…。」
 30歳代の男性店員が丁重に対応する。
 「知らねぇよ!!こっちから先に持って来い!!」
 「申し訳ございません、すぐお持ち致します。」
決して間違った対応ではない。しかし客の男はなおも怒鳴り散らす。
 「謝んなら土下座して謝れよ!こらっ!!」
男は店員の頭を殴る。
 「や、止めて下さい!」
 「るせぇ!病院行く金ならいくらでもやるから殴らせろや!!」
襲いかかろうとする男に若菜が立ち上がる。
 「止めなさいよ、ボク」
 「はっ?何だテメーはっ!?」
睨みつける男。若菜の胸ぐらを掴む。
 「オッパイでかいな…。へへへ、3万で揉ませろよ!」
若菜の巨乳に気付きニヤニヤし始めた。
 「どーして男はそんなにオッパイ好きなんだかねぇ…。」
溜め息をつく。
 「あっ?」
 「あじゃないわよ。その汚い手を早く退けなさいよ。」
 「何だコラッ!?」
男がすごんだ瞬間、若菜の背負い投げが炸裂する。瞬殺で床に叩きつけられる男。のたうちまわる。
 「えっ…?」
連れの男も驚いた。
 「ご飯の先後でいちいち煩い小さい男なんて嫌だわ。」
 「な、何だとこの野郎!!」
投げ飛ばされた男が立ち上がった瞬間に若菜は警察手帳を見せる。
 「暴行の現行犯ね。逮捕します。」
毅然とした態度で手錠をかけた。
 「け、警察!?ま、マジかよ!?こんな事で逮捕かよ!」
 「暴行は暴行。頭冷やして来なさい。」
 「ふざけんなよ!!」
石山が連絡するとすぐにパトカーが来た。最後までわめき散らしながら連行されて行った。
 「ありがとうございました。」
店員が頭を下げた。
 「いえ。」
ニコッと笑う若菜。食事を終え店を出る時に店員が言った言葉が頭に残る。
 「原発事故で街も人間も変わってしまったんです。全てが…。」
その一言の意味を知るのはそれから間もなくの事であった。


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