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ピエロの恋
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ピエロの恋-3

「タダシ、今度はいったい何を企んでいるんだ。こんな児童公園に連れて来て」
俺はシーソーの片方に奴を縛り付けて固定すると、反対側に乗っかってシーソーをこぎ始めた。
ガッタン、ガッタンとピエロの体が上下に動き地面にぶつかる時衝撃の振動がする。
「やめろやめろ! カメラが壊れる」
「ところで、お前の目は幾つあるんだ? 顔についてる2つの目のほかにもあるだろう?」
「えっ、タダシ、いったいなんのこと」
とぼけるな! 正直に言わないとこれを続けるぞ。お前が後ろの方も見えてるというのは分かってるんだ。俺はそう言ったね。
「あ……安全のため、一応360度にカメラの目があるんだ。この頭に仕込まれている」
だろう? 俺は今度はブランコに奴を固定して激しく漕いでやったね。
「タダシ、気持悪いよ。僕酔って来た」
本当のことを言え。箱の下の方にも隠しカメラがあるだろう?
それで女子のスカートの中を覗いているとか?
「な……なんでそんなことしなきゃいけないんだ。そんなもの覗いたって気持悪いだけだろう?」
これは最後まで否定したのでブランコの拷問は中止して、静かに揺らしてやった。
「そうだよ。タダシ、このくらいが僕は楽しいよ。ありがとう」
それ以来、俺はピエロにねだられて、児童公園にもときどき行くようになった。

俺は担いで来たピエロを草の上に下ろすと、仰向けに寝かせ自分もその横で寝転んだ。
「あれれ……タダシ、どうして僕を倒したんだよ」
まあ、慌てるな。ほら青い空を見てみろ。雲が流れている。悠久の時を感じないか?
空の青が目に染みるだろう。たまにはこうやって心を空っぽにしてみるんだ。
「うん、そういわれれば、僕は空を見上げることはないからな。新鮮な感じがするよ」
だろう? 俺はそうしながらちょっとした冗談を思いついた。
俺はそっとピエロの横顔に顔を近づけてから、声をかけた。ピエロ。
「なに? う……うわぁぁぁぁぁ」
俺の方を向いたピエロと0cmのところに俺の顔があり、奴の口と俺の口が重なったんだ。
その慌てぶりが面白くて俺は腹を抱えて笑った。
どうせパソコンの画面いっぱいに俺の顔が映っただけだろうから、過剰反応ってなもんだ。
「違うよ。僕はバーチャル映像を見てるんだ。その方がリアル感があるから……。
だからタダシに唇を奪われたと思ったよ」
それは悪かったな。忘れてくれ。ちょっと驚かしてお前の反応が見たかっただけなんだ。
誓って言うが俺は、お前の唇を奪おうなんて本気で考えてはいないから。

俺達は泥だらけになって家についた。
俺はピエロを担いだまま玄関から風呂場に直行した。
「シャワーとかは大丈夫なのか? 水をつけると壊れるとか?」
俺の質問に布袋の中から怒った奴の声が聞こえた。
「その前にもう家に着いたんだから、この布袋を取ってくれよ」
ああ悪い悪い。俺は目隠し代わりの布袋を奴の頭から取ってやった。
「今の質問だけど、一応防水仕様になってるから水没しないかぎり大丈夫だよ。
あっ、タダシ。君何をしてるんだ?」
何をって? 途中にわか雨に降られてべちょ濡れの上にトラックに泥を頭から浴びせられて汚くなったから、服を脱いでるんだ。
シャワーはお湯が出るからお前も一緒に洗ってやる。そう言いながら俺は全部脱ぐとシャワーからお湯を出して体を洗った。
ピエロの体もシャボンをつけてからシャワーで流してやった。
だが奴は俺の方を見ようとしない。おい、何をそっぽ向いてるんだ。
途中目隠ししたのを怒ってるのか? だってお前だって自分の家は秘密だって言ってるだろう。
だから家の場所くらい、俺だって秘密にしていても罰が当たらないだろうさ。
それでも俺の場合は家に招待したんだから、厳密に言えば平等ではない。
「違うんだ。タダシ、君の裸が恥ずかしくて見られないんだ」
な……なにぃ? お前は銭湯とか温泉とかに行って、他人の裸を見たことがないのか?
すると顔を赤くしてピエロはコックンと頷いた。
ピエロはその後、車が迎えに来た。GPSで俺の家の位置がわかったそうだ。
何のための目隠しだったか訳がわからなくなった。
それと俺たちに泥をはねたトラックはピエロがカメラで録画していて、後でクリーニング代を請求しようと言ったので、止めさせた。


 


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