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ピエロの恋
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ピエロの恋-2

俺の質問にピエロは口に食べ物を入れたままらしい喋り方で説明した。
「ピエロは本当の顔を厚化粧で隠すだろう? 僕はこの顔文字みたいな顔で素顔を隠してるから同じだと思うからさ」
「なるほど。それじゃあ聞くが、そのある事情って例えばどんな事情なんだ?全く俺には思いつかないんだが」
するとピエロは不機嫌な顔をして見せた。
「それは言えないって言ったじゃないか」(~へ~)
マアマア,怒るなよ。いやお前の本当の事情は言わなくても良いんだ。
たとえばお前と同じにアバターロボットを使う奴がいたとしたら、それは例えばどんな事情が考えられるかってことだ。
そのくらいはヒントをくれても良いだろう。
ピエロは天井を見上げながらちょっと考えた。そして俺を見た。
「例えば強度のアレルギー体質で外出ができないとか。」
それなら顔を公開しても良いだろう。何故見せないんだ? しかも声まで変えて。
「交通事故で顔も壊れて喉もつぶれてしまったとか」
なるほどそれじゃあ、今のお前はとっても醜い顔と声の持ち主だってことだな?
すると奴め、顔を真っ赤にして怒り出した。
「ぼ……僕は自分で言うのもなんだけど、す……すごい美少年なんだぞ。
だから女の子にキャアキャア騒がれるのが嫌だから隠してるんだ」
なるほど、はいはい。そうだろうよ。まあ、そういうことにしておこう。ついでに声もこの世のものとは思えない美声なんだろうな。
いいよ、そういう設定で俺は一向に構わないぜ。
「な……なんだよ。そのなんかひっかかるような言い方は」
おう、気にしないでくれ。それより人間ってのは外見より気性だよ。
いくらイケメンだからと言っても、性根が腐っていればそんなのは焼却処分だよ。
お前もそういう奴は何人も見て来たろう?
すると奴は首を横に振った。実際は顔の画像が左右に揺れるだけだが。
「見たことないよ。例えばどんな……」

そこで俺は実例つきで解説してあげたね。
まずあの2列目の一番後ろにいる気障野郎。頭に油つけてさかんに櫛を撫で付けているあいつだよ。
あいつは女をひっかけてやることしか考えていない。
自慢話を本人がするから分かったんだが、顔が人気タレントに似ているからそれを利用して5股までかけているそうだ。
わかるか? 同時に5人の女と付き合ってやりまくっている。
「な……なんて酷い奴だ。それに女たちもバカだよ」
お前が腹を立てることじゃない。
女達がバカだと言うけど、女をコロッとまいらせるテクが奴にはあるんだ。
顔もそのテクも才能だということさ。まあ、才能がある為に腐れ野郎になってしまったがね。
「君は? 君にもしその才能があれば同じ道を歩くってことかい」
ああ、俺か? 俺はそんな面倒なことはしたくない。女は厄介だ。俺は女って別の生き物だと思ってるよ。
だから一生独身で気楽に生きるんだ。

ピエロは俺を気の毒そうに見た。
「寂しくないのかい? たった一人で生きるなんて。そのまま歳をとって死んで行くんだよ」
おいおい、人間死ぬときは、みんな1人ぼっちだよ。そんなこと寂しがっててもしょうがないだろうが。
「君は強いんだね」
おい、なんだ君君ってさっきから。俺はタダシって言うんだ、覚えておけ。
「タダシか。僕の友達第1号だね」
おい、何号まで作る積もりでいるんだ。で、俺がお前の友達だってか?
それなのに顔も声も特殊な事情も話さない。
そんなのが友達って言えるのか?
「なんでもかんでも秘密を全部打ち明ければ友達ってのは間違っていると思う。
言えない事情も含めて理解してほしいよ」
そう来たか。わかった。まあ、友だちでも良い。

俺は来賓用のエレベーターに向かって行くピエロを呼び止めた。
「おい、お前はなんだってエレベーターを使うんだ。生徒は使用禁止だぞ」
すると困った顔をしてピエロは言った。
「だって僕は階段を下りられないから仕方がないじゃないか。学校も許可してくれてるし」
俺は考えた。それで奴の体重を聞いた。すると奴は慌てた。
「体重も秘密なんだ!」
馬鹿野郎。お前の本体じゃなくて、ロボットの体重だよ。
「そ……それなら20kgくらいかな」
俺は用務員室からロープを借りてきて、奴の胴体を縛ってから背中に担いだ。
「ほらこうやれば階段を下りられるだろう」
俺は3階から2階と1階の間の踊り場まで負ぶってやった。
「最後にちょっと面白いことをしてやる」
俺は奴を手すりに乗せるとロープを持ちながら一気に滑り下ろさせた。
「きゃぁぁぁ、やめてぇぇぇ!」
だが1階の床に落ちる前にしっかりと押さえたので衝撃はなかったと思う。
「タダシ! ぜ……絶交だ。なんてことするんだい。壊れるかと思った」
俺は笑って謝ったよ。だがこういう冗談もしてみたかったんだ。
以来奴は生徒玄関から俺と一緒に出入りするようになった。
ロープも用務員室の麻縄じゃなくて、綺麗な飾りロープをつけてくるようになったんだ。
ああ、そうだ。俺が階段や段差のところを運んでやってるのさ。
筋トレにもなるしな。

 


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