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貴方を、護りたい・・
【純愛 恋愛小説】

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佐藤家の過去-6

他の同僚から彼女の黒い噂を知った母は稼いだ金が取られる、しゅうをラクにさせて
あげられない・・それに恐怖を感じた母は・・

「分かり・・ました、ゴミ・・集めてきますっ!」
そう言って疲れた体に鞭を打ち、再び仕事に打ち込む母、そんな彼女を丸で何かの見世物
を観るかの如くあざ笑うオバハン


それから母は5時に帰れる筈だったのに夜の10時まで激しい肉体労働をさせられ
彼女をそこまで働かせたオバハンは5時で帰り行きつけのマッサージ店で他人の陰口を
マッサージ師の耳が折れる程にベラベラと話し
帰宅中、楽しそうにプレゼントを買って貰って喜ぶ家族と通り過ぎたりして
身も心もボロボロの母を一層追い詰めて・・

そしてやっとの想いで家に帰ると既に中は暗く食事の支度も何も無く、しゅうは母に
言われた通り自室で眠っており、その我が子の寝顔をドア越しからひっそりと見つめる母
「・・・・」


それから朝になり彼女がやる筈の朝食の支度も無く、えも得ずカップ麺で済ませるしゅう
「・・母さん、どうして支度をしてくれないの?今日は大事な練習試合があるから力を
つけたいのに・・」
この時しゅうは大事な試合が迫っていて母もしつこく大丈夫って言うから母のホントの
気持ちに気づく事無く、何処か冷たい態度を取ってしまい・・

「・・あ、ゴメンね・・しゅう」
やっと我に返ったかの如くそう謝る母
しゅうも多少心配は抱いたけれど、さほど気にする事無く元気の無い母を置き学校へ急ぎ
・・その行動がのちに取り返しの付かない事態になる事と知らず


「ホラァ!さっさと来なさいっ!ほーんと鈍感何だからぁ!」
スーパーの裏で何もしないオバハンに顎でアレしろコレしろと使いまわされる母

「あっ!・・」
散々走り回される物だから躓いて顔面を硬い床に打ち箱にあった蜜柑をぶちまけてしまい
「あーあーなーにやってんのよっ!ほんっとグズなんだから・・」
と、怪我した後輩を心配する事無くツカツカと目を細め母に近づこうとしたその時

「おいっ、崩れるぞっ!」
何処からとも無く聞こえる男の強い声、オバハンが咄嗟に天井まで積んであった機材等に
目をやると・・
「あわわわわぁっ!」
母が躓いた衝動で機材等が揺れそれらが一気に崩れ出し一目散に逃げ出す周りの人達
そして一人取り残された母も逃げ出そうと思い立ち上がった途端

「痛ぁ!」
膝から痛みを感じ一瞬怯んだその瞬間に

「はぁ・・あ・・!!」

何時もと代わり無い賑やかなスーパーの裏から響き渡る激しい倒壊の音・・
母を助けようともせず自分の身を護る周囲の連中がボー然とその場で凍りつく

「・・幸子・・・貴方・・・しゅう」


それから母は、命の危機は去った物の何週間何ヶ月経っても意識は戻らず病院でただ
静かに眠り続け、母が事故に遭った事実は行方不明の父は勿論、東京で一人暮らししてる
姉も知らなかった、スーパーでの倒壊事件は店側が上手い事公にせず、ただ一人母の事故
を知るしゅうも心配掛けたくないと一人この現実を背負い込み電話一つせず

母は生死の境を彷徨い入院、父は相変らず行方は分からず、姉には・・夢に向かって必死
に勉強しているのに自分を助けて欲しいとわざわざ戻ってもらう訳にも行かず、他に頼れる親戚も近くに居ないしゅうは生活金を「母さんが今ちょっと色々あってお金を少し貸して欲しいって・・」など適当に言って遠い親戚から送金を願い出て、家の事は近所の
おばさんらに教えてもらい、時より「どうしたの?何かあったの?」と心配の声が
挙がるも「早いうちカラ一人暮らしの基礎を学ぼうと思って」などと言って
親戚も近所の人にホントの事を打ち明ける事は無く・・
そうやって彼は遊び盛りで成長盛りの小学3年生が脅威の自立を強い想いと共に奮い
立たせ誰の手を借りるでも無く一人でその辛く理不尽な現実を背負いこみ


それから4年後、しゅうが中学生になり入学式から一ヶ月後の5月
病院から電話が掛かってきた・・

「えっ!?母さんが目を覚ましたって!?」
その一方に衝撃が走り、無我夢中で母の元に急ぐと

「・・・・」
目を覚まし起き上がっている母、しかしそれ以上動く事なくボーと目の前の壁に視線
を向けており
それでも母の回復に喜びの意を表し、すぐ様母の元へ駆け寄り話しかけると

「母さんっ!ねぇっ!」
呆然とする母の腕を揺するも身動き一つせず、しばらくすると突然口を開く

「・・う、うー痛い痛いよぉーっ!」
しゅうは咄嗟に自分が母を痛がらせたと想い軽く謝り腕を放すも
「うーうー頭が痛いようーっ!うーうー」

「か、母さん・・・・?」
突然子供の様な素振りする母を前に動揺し

「佐藤サン・・ちょっと・・」
母の異常に心当たりのある担当医が彼を診察室へ誘い訳を話す

「・・そんな、母が・・」
医師からの話は衝撃的な物だった
過去の強いストレスから脳に異常をきたしあの様に脳が幼児化したとかで・・
しゅうは、強いストレス・・と言う言葉にに前から想い当たるふしがあり

病院からはこれ以上治療する事も無く他の患者さんを受け入れたいとかの都合で退院を
余儀なくされ、彼は変わり果てた母を自宅へ連れて帰る事に・・


「うーうー、ねぇねぇご飯まだぁー?」
「待っててっ!今飛びっきり美味しい生姜焼きが出来るからぁ!」
料理の支度をする彼の背中に声を掛け、子供番組を観る母・・

後ろではしゃぐ母の声を耳にしつつ手を動かし、しゅうは思う・・

ゴメンね、母さん・・俺のせいで・・俺が母さんを
  救ってあげられなかった・・俺が・・護ってあげなきゃいけなかったのに
   だからこれからは俺がずっと母さんを支えてくよ・・ダカラ


「お邪魔しましたぁ・・」


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