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貴方を、護りたい・・
【純愛 恋愛小説】

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佐藤家の過去-7

幸子からしゅうの、イヤしゅう達一家の過去を全て知った樹里奈・・
浮かない顔で帰宅しようとすると

「あ・・・・」
ふと空に顔を上げると雨が降っていて、天気予報から夜に雨が降る事が分かっていた
樹里奈は持っていた傘を差し

ザーー

人の気も知らず容赦なく降り続ける雨
人気も無く暗く肌寒い住宅街・・その光景はまさに樹里奈の今の心情その物であり

「はぁ・・」
力無くその足を動かす樹里奈、とその時路上の角に何やら人影を目にする

「・・何、人?」
まじまじと見つめ・・ソレの距離を取り確認をすると、ソコに・・

「しゅう!」
近寄って見るとソレはしゅうその人だ、体中殴られた後で一杯で息をするのもやっと
と言う程に冷たい雨に打たれていた

「嫌ぁっ!しゅう!しゅう!しっかりっ!ねぇ」
傘を放り投げ樹里奈も雨に打たれ彼の体を起こし、事情を聞くと

「・・う、あぁ・・ライバル・・のチーム、が大勢で来て」
どうやら放課後のサッカー部室でどういう訳か例のドーピング疑惑が伝わり
ソレを問い詰め「お前の仕業かっ?」と聞かれ彼は「その通りだよ、俺が皆に勝つためと
無理やり渡して・・」など全くの潔癖の彼が部員達を護る為、罪を一人で背負い込み
ソレを真に受けたライバルチーム共が怒りをあらわにし集団で心無い暴言を吐きつつ
殴る蹴るを繰り返し去って言ったそうで
と、言う話を声を絞り上げ虫の息ながら語るしゅう

「ゴメンッ!もういいよっ!」
涙ながら豪雨に打たれ叫ぶ樹里奈・・そして彼が今まで家族を護る為自分一人で苦労を
背負いつつも人前では無邪気な笑顔で皆を明るくする彼が頭に浮かび


 どうしてぇっ!!
 どうしてなのよっ・・なんで彼がこんな目に遭わなければならないのっ!
 彼が一体何をしたって言うの!

 普段作り笑顔で皆に心配掛けないとする彼も今はそんな力も無く、ただただ苦しそうに
息を荒げ、そんな彼を強く抱きしめ

 神様・・

 お願いします

 私はどうなってもいいっ!

 私の身に不幸がどんなに起ころうと・・

 でもっ!

 彼だけは・・この子ダケはぁっ!

 この子は何も悪くないっ!悪くないんだからぁ

 この子はこんなにもっこんな小さな体で・・愛する家族や自分を慕う仲間達の為に
努力を惜しまない・・そんな彼をっ!

 この子はよく頑張った私達の想像以上にっ!

 だから・・だからぁっ!!

  もう許してあげて・・開放してあげて・・

 お願い・・します


 冷たくも悲しいその無情にも降り続ける豪雨の下
 
 世界で最も愛する彼の嘘偽りの無い・・本当の、幸福を・・心の底から願う少女
 
 その後、彼女のその細い腕で彼を先ほど後にした彼の家へと運んで行った・・

 「しゅう・・しゅう!、もうすぐだからね!しっかりっ!」


「おい、あいつか・・」
ボロボロの二人を見つめる二人組のライバルチーム共
「一体さっきから何言ってんだろうな?」
二人の視線の先はしゅうでは無く関係の無い筈の樹里奈に向けられていた
「別に俺たち、偶然アイツらのチームのドーピングの件を知った訳じゃねーしな」


「・・俺は」
閑静な街をボーと眺める一人の男、彼は浮かない顔で視線をジメッとした地面に落とし

「響子・・幸子・・・、しゅう」
その父は複雑な思いを抱きある目的地へと足を運ぶ・・


「はぁはっ!・・」
暗い病室で一人突然息を荒げ起き上がる母・・

「はぁはぁはぁはぁはぁっ・・私は・・一体・・」



第四章「佐藤家の過去」 終

 次章 最終章「幸福」 作成予定




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