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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road-4

「でけぇ…」

横にも広く、奥行きもそこらのシアターとは比べ物にもならない。

《シアター・ヘブンズライン》

(凄い名前だな…)

とりあえずここにいても仕方がないので、龍矢は中へと入っていった。

「シアターとかは初めてだろ?ついでに見てこい!」

ダニーの一言を受け、客席に入る。
東洋人が来るのが珍しいのか、隣に座った外人がこちらを見るが、気にせずに舞台を見ていた。

ブザーが鳴り、幕が上がる。龍矢は微かな緊張感に支配されていたが、それは一瞬にして消え去った。

ステージに最初に登場した女性…。
腰まで届くかという明るいブラウンの髪。
透き通るような白い肌…。そして、全てを包むような優しさに溢れた端正な顔立ち。

陳腐な表現だが、龍矢は今ステージに現れたばかりの女性に見惚れていたのだ。
他にも続々と役者が登場するが、彼の目は彼女の姿を。彼の耳は彼女の声を聞くことだけしか機能していなかった。

フィナーレのダンスが始まり、ダンサー達が皆踊り始める。

(そうだ、マリアは…)

ようやく当初の目的を思いだし、女性から目を離した龍矢はマリアを探し始めた。
ダンサー達は全員衣装が一緒のため、服では見分けがつかない。
しかし、マリアの紅の髪は誰にも真似は出来ない。髪の色に注意をしながら見ていると、紅い髪を揺らしながら懸命に踊るマリアの姿が見えた。
その姿は一生懸命で、どこか不安気で、それでも輝いていた。

(夢…か)



ステージが終わり、マリアの迎えに行くために楽屋へと向かう。
途中、警備員に呼び止められたが少しばかり嘘をついて通してもらった。
通路を歩くと、楽屋らしき部屋からマリアと、あの女性が一緒に出てきた。

「…ん、あ!タツヤ!」
マリアが女性との会話を打ち切り、近付いてきた。

「レイラさん、彼が朝言っていた人です!」
「そうなの…。ありがとう、ボーイ」
「あ、いや…」
「あ!タツヤ照れてるの!?」
「ちがっ…違うぞ!」

龍矢は赤い顔を必死に冷ましながら、極力冷静を装って尋ねた。

「あの…お名前は?」
「レイラ…。レイラ・セルシウスです。よろしくね、タツヤ」
シアターを後にした二人は、アパートへと向かっていた。龍矢のアパートの向かい側にマリアのアパートがあるのだ。
朝の一件もあり、心配なので一緒に帰っているのだが、何故かマリアの機嫌が悪い。
彼女の機嫌を表しているかのように、空には暗雲が立ち込めていた。


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