dream・road-3
夢…。幼い日に、自分にボクシングを教えてくれた外人の顔が浮かぶ。
「ボーイはいったい何しにこの街に?」
「夢を…掴むために」
「ボクシングか?」
「あぁ…」
ダニーは突然龍矢を立ち上がらせると、龍矢を眺め始めた。
「タッパ(身長)は177ってとこか…」
「お、おい…」
「体重も…この身長なら…」
「おいっダニー…」
「ボーイ。オレの店で働かないか?」
「はぁ?」
「知り合いにボクシングに詳しいやつがいてな。そいつに頼めばトレーナーをやってもらえる。代わりに、朝と昼はオレの店で働く。どうだ?」
龍矢は一も二もなく頷いた。夢を叶えるチャンスが目の前に転がっているのだ。拾わないわけかない。
自分の夢にとんとん拍子に進んでいる。龍矢は右手を振り上げて喜びを表していた。
ダニーはさらに住まいまで用意してくれた。カフェまで歩いて五分。すぐ近くには大通りもあり、まさに穴場と言っていいアパート。
シンプルなテーブルと椅子。そしてベッドだけの部屋。シンプルだが、今の龍矢にはそんなものはどうでもよかった。出窓から見えるニューヨークの街並みが、彼の胸を躍らせた。
働くのは明日からでいいので、今日は街を見て回ってこいという言葉を受け、龍矢は街へと繰り出した。
とても広い公園、子どもたちが遊んでいる路地裏。活気溢れる商店街…。日用品を買い揃え、部屋に戻る頃には、空は紫の色彩を帯びていた。それでもなお街の灯は消えない。
眠らない街…。
そんなフレーズがしっくりくるような街に龍矢は感じた。
部屋に荷物を置いた後、龍矢はダニーの店へと向かっていた。
初日から野宿せずに済んだのはダニーのおかげだと龍矢は思っていた。ならば、せめて早く仕事を覚えようと思ったのだ。
カフェの前に着くと、そこはまさに様変わりしていた。
夜用にライトアップされた店は、一転してバーへと変わっていた。
とりあえず中に入ると、ダニーがカウンターから顔を出してきた。
「タツヤ?仕事は明日からだぜ」
「いや、手伝いたくなってさ…」
ダニーは渋い顔をすると、龍矢に呟く。
「見ての通り、夜はバーをやっていてな。この頃は警察の目も厳しくて未成年は夜は働かせられんのだ…」
「…わかった」
「じゃあ、仕事の代わりにマリアを迎えに行ってやってくれないか?朝の件もあるしな…」
「オーケィ、任せてくれ」
ダニーからチケットをもらい、龍矢はシアターへと向かっていた。カフェから歩いて十分…。