蘇る記憶-1
第９話 蘇る記憶
麻衣は病院を出ると、その足で自宅へ帰ってきた。
あの古い団地の自宅である。
身体は嘘のようにすっかり良くなっていた。
熱っぽかった症状まで治ってしまったようである。
お腹が軽くなるとともに体重も軽くなったようで、階段を昇る足取りも軽い。
しかし、初体験を終えた麻衣は、自分の身体が穢れてしまったような気持ちだった。
なにか取り返しのつかない一線を越えてしまったような気がし、恥ずかしい興奮に包まれていた。
自室に入ると、セーラー服を大急ぎで脱いだ。
早くシャワーを浴びたかったのだ。
黒タイツを脱ぐと、忌まわしい証拠を葬り去るように部屋の片隅へ投げ捨てた。
ショーツを脱ぐと、漏らしてしまった愛液が付着していないかクロッチの部分を丹念に見返した。
幸いにして目立った汚れはなかった。
急いで浴室へ行くと、シャワーを熱めにして丁寧に股間を洗った。
そうすれば、病院へ行く前の自分に戻れるような気がしたからである。
自室へ戻るとショーツ一枚の姿で麻衣はベッドにうつ伏せになった。
枕に顔をうずめ、大きく深呼吸している。
一見泣いているようにも見える。
しかし、漏れ聞こえてきたのは、あどけない顔の麻衣には似つかわしくない言葉だった。
「チクショー！」
白い肌の素足をばたつかせる。
心の葛藤から唸り声が漏れ出た。
「ウーッ！ウーッ！」
排便でかなり体力を使ったので疲れているはずだったが、深夜にカフェインを摂った時のように目は冴え神経は興奮している。
寝返りを打ち、あお向けになった。
目を閉じる。
短い間に起こったいろんな情景がよみがえる。
皆が体育に備えてジャージに着替えをしている教室の風景。