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透明な滴の物語U
【同性愛♀ 官能小説】

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蘇る記憶-2

学校医の白髪の老女医。
老女医が手に持つ重厚なペン。

そして、次のイメージが浮かんだとき、そのイメージから麻衣は逃れられなくなった。
病院へ行くために乗り込んだタクシーの窓から見えた千帆である。
千帆の目。
無言でなにかを語っている目。
なにかを隠し持って麻衣を見ている目。
奥で鈍く光る憐れみの念。
麻衣の心は乱れた。
タクシーから見た時には理解できなかったが、今の自分には直観的にあの目の意味が理解できるような気がしたからである。
今の自分にはあの視線がひしひしと突き刺さるような気がする。

その視線から逃れようと目を閉じたまま顔を左右に振った。
しかし千帆の視線はどこまでも追いかけてくる。
千帆の視線から逃れられない。
(もしかすると、私は千帆から見透かされていたのかもしれない、こうなることを)
そう気がつくとショックを受けた。
(私が病院で肛門を晒され、プラスチックの管で小さな穴を貫かれ、お腹の奥に入れられた浣腸液に苦悶することを千帆は見通していたのだ)
今になって、千帆の目が淫靡な色調を帯びていたことに気が付いたのである。

目を開けると天井が目に入った。
いつもの自室の古い天井だったが、麻衣は違ったものを見ていた。
清潔な処置室の天井。
蛍光灯の明かりがキラキラとルーバーに反射する。
キラキラときらめく格子状のルーバー。

麻衣はベッドから立ち上がった。
椅子に置いたカバンを開け、中から紙袋を取り出した。
病院で処方された薬の入った白い袋だった。
自分が浣腸治療を受けた病院の名称が印刷されていた。
(ウソじゃない。私は確かにこの病院で浣腸されて帰ってきたのだ)

薬の袋を置くと、麻衣は先ほど投げ捨てたタイツを机の陰から拾った。


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