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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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誠意のカタチ-6

「……そんなことないよ。そう思ってたら痛い思いして助けたりなんてしないもん。頭より先に身体が動いてたって感じかな」


ハハハとはにかんでしまう自分が、情けなさでいっぱいになる。


結局感情をぶつけられらないあたしは臆病なまんまで。


翔平に好きって気持ちを伝えたあの日の勇気は、まぐれだったのかとすら思ってしまう。


無意識に里穂ちゃんに手を伸ばしたってことは、「助けなきゃ」って気持ちだけだったのに、それを打算と取られて、キレるべきとこなのに。


「ホント、バカ。背中痛めてまで……」


泣きそうな声を振り絞る里穂ちゃんのその表情に、怒りなんかじゃない、なんとも言えない気持ちがこみ上げてくる。


申し訳なさすら伝わるその様子は、以前の可愛いげのある彼女に戻ったように感じた。


少し嬉しくなったあたしは、


「でも、里穂ちゃんは怪我しなかったみたいだからよかったあ。あたしは頑丈だから全然大丈夫なんだよね」


と、へへへと笑いかけてみる。


もしかしたら、との期待を込めて。


……でも、里穂ちゃんはすぐにギロリとあたしを睨んだ。


「調子乗って話しかけないでください! 小夜さんは貸しを作ったつもりかもしれないけど、あたしは別に助けてなんて頼んでないし、お礼なんて言いませんから」


そう捨て台詞を残した彼女は、乱暴に段ボールを抱えるとツンとあたしから顔を反らしてスタッフルームから出ていった。


ポカーンと口を開けたままのあたしは、バタンと大きな音を立てたドアを眺めて固まっていた。


嵐が去った後の静けさの中で、ふう、とため息。


なんか、もう疲れたな。


ビシッと言うべきことを言えない自分にも、どう歩み寄っても近付かないこの距離にも。


里穂ちゃんに冷たくされても耐えているあたしを見かねた翔平の「無理しないで辞めろ」って言葉が再び過る。


報われない誠意のカタチに、あたしの心は限界を迎えていた。





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