誠意のカタチ-13
「だ、駄目だ! 絶対駄目!」
「何でですか? あたしは『お友達として』小夜さんをお誘いしてるだけなんですけど」
「お前の下心がモロ伝わってくんだよ!」
顔を真っ赤にして喚く翔平の姿は、最早クールとはほど遠い。
そんな彼に、強面社員の沼津さんがスススと近寄って、彼の方をポンと叩いた。
「お前、さっき『女が相手じゃ浮気になんないっすよ』っつってたじゃねえか」
「で、でもこの場合は明らかに……」
「松本本人も『お友達として』ってハッキリ言ってんじゃん」
「う……」
タジタジになる翔平に、沼津さんはニヤリと妖しい笑み。
絶対、面白がってる。
「なーんだ、じゃあ問題無いじゃないですか。じゃあ決まり! 小夜さん、明日の夜は親がいないんで泊まりに来てください」
「や、やっぱり駄目だ! 下心だらけの男が誘う時の台詞にしか聞こえねえもん! 小夜っ、泊まりに行ったら浮気とみなすからな!」
「下心なんてないですよう。一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝ながらガールズトークするんです」
「お前が言うと、やらしいことしか想像できねえんだよ!」
里穂ちゃんに掴みかかろうとする翔平を、沼津さんが笑いながら羽交い締めにする。
「確かに、妙にエロい想像しちゃうかも」
すっかり空気となった店長のボソッと言った一言が周りの笑いを誘う。
必死な様子の翔平が余計に可笑しくて、ついにあたしも大声で笑い出した。
小首を傾げる里穂ちゃんの子犬のような表情が不思議そうにあたしを見つめている。
無邪気な顔しちゃって、小悪魔ってこういう娘のことを言うんだろうな。
あたしは里穂ちゃんの頭を軽く撫でてから、ニッコリ笑う。
「いきなりお泊まりはハードル高いから、まずはショッピングとかしながら一緒に遊ぶのでもいい?」
「いいんですか?」
パアッと目を輝かせる里穂ちゃん。
里穂ちゃんは女の子だし、これは浮気に入らない……よね?
チラッと伺うように周りを見れば、ニヤニヤ笑うみんなの顔と、
「絶対駄目だあーーっっ!!」
と、涙目になって暴れながら叫ぶ翔平の姿が目に飛び込んでくるのだった。
〜終〜