誠意のカタチ-4
「あ、里穂ちゃんごめんね。こっち使って? そっちの椅子は危ないから……」
あたしがそう言って、自分が座っていたキャスターがついていない木の椅子をズイッと差し出すも、里穂ちゃんはチラリと冷ややかな視線を投げ掛けただけ。
そしてローファーを脱ぐとひらりとキャスター付きの椅子の上に乗った。
でも、椅子に飛び乗っただけでグラリとバランスを崩しそうになる里穂ちゃん。
ほら、言わんこっちゃない。
前に同じことをして倒れてしまった経験があるから、なおさら止めなくてはいけない。
そうじゃなきゃ、あたしがしっかり椅子を支えてあげないと……。
そう思って手を伸ばしたその瞬間――。
「きゃあっ!!」
「里穂ちゃ……!!」
戸棚の段ボールを取り出した里穂ちゃんは、その重さにバランスを崩してしまって、身体が床に落ちていくのが見えた。
静かになった部屋で、ひっくり返った椅子からキャスターがカラカラ回る音だけが鳴り響く。
何となくデジャヴを感じながらあたしは呑気に天井のクロスを眺めていた。
あれ、あたし何でひっくり返って床に寝転んでるんだ……?
そう疑問を持ちながら腕の感触に、目線を下げてみたら、柔らかい髪からフワリと甘いシャンプーの匂いがして、あたしは里穂ちゃんを助けようと手を伸ばしたことを思い出した。
女の子特有の柔らかい身体の感触と、のし掛かる重みで、彼女を受け止められたんだと、安堵する。
「だ、大丈夫だった……?」
一切声を発しない里穂ちゃんに恐る恐る声をかける。
でもあたしの声を聞いたその刹那、彼女は慌てて跳ね起きてあたしから距離をとった。
真っ赤な顔で涙ぐみながら睨み付けるその表情。嫌ってる女に助けられて不本意と読み取れる。