本当の気持ち-11
なんとかひとしきり話し終えると再び沈黙が訪れる。
時折、レンタル店の自動ドアが開いて、賑やかな音楽とエアコンで冷やされた空気が、お客さんと一緒に外に飛び出す以外は、ショッピングモールは静かなもんだった。
そんな沈黙の中で、生ぬるい風がふわりと吹いたのを皮切りに、ずっと黙ってあたしの話を聞いていた店長が、ゆっくり顔を上げた。
「そんなに好きなら、ちゃんと気持ち伝えないと。駿河くんは誤解したままなんだろ?」
店長の言葉が想定内だったからか、あたしは小さく息を吐く。
「……そうなんですけど、今さらもうそんなことできないんですよ。今頃は里穂ちゃんの告白を受けて、きっとOKしてるかもしれないし……」
仮に、駿河が里穂ちゃんを何とも思っていなかったとしても、好きだった女に自分の想いを蔑ろにされたあとで真剣な想いを伝えられたら、心は動いてしまうのが人間というもの。
しかも、あんなに可愛い女の子が告白したら、大抵の男はグッとくるはずだ。
「じゃあ、諦めるしかないんじゃない?」
「そうしなきゃいけないってのは理解してるんですけど、なんであんなバカな真似しちゃったんだろうって後悔ばかりで、諦めきれないんですよね……」
結局自分の気持ちを晒け出せずに、里穂ちゃんの告白のチャンスを作ったあたしはそうするしかないとはわかっていても、気持ちが消化しきれない。
「じゃあ、諦めるにしてもなんにしても、やっぱり駿河くんに今の気持ちを正直に伝えないと」
「でも、駿河には嫌われてしまったし、今更そんな真似したって虫が良すぎるような気がするし……」
泣いてる時って、思考が悲劇のヒロインモードになってるせいか、店長が何を言ってもデモデモダッテと言いわけばかりのあたし。
困ったように頬を掻きながらあたしを見ていた店長は、やがて小さなため息を吐くと、
「古川さん、大丈夫だよ。きっと諦められるから、ここは松本さんに駿河くんを譲りな?」
と宥めるようにそう言った。
耳を疑ったあたしは、思わず顔を上げて店長を凝視する。
すると店長は、一人で納得したかのようにウンウン肯きながら、口を開いた。
「だってさ、古川さんはそもそもそんなに駿河くんのことを好きじゃなかったんだよ。だって、松本さんが駿河くんを好きって言っても勝負しないで逃げてるし」
「は?」
生あくびをしながら面倒臭そうに言うその口ぶりに、泣いていたはずのあたしの語調は若干キツくなる。
そんなに駿河のことを好きじゃなかったなんて、んなわけあるかっつーの!