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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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本当の気持ち-10

次に浮かぶのは、恋人を演じたアイツの姿。


繋いだ手の力強さ、交わした唇の柔らかさ、裸で抱き合った温かさ。


演じてた間だけの恋人だったけど、駿河は精一杯あたしを愛してくれた。


なのに、あたしは何が大切なのかを間違えて、それを全て踏みにじって……。


今さらながら、アイツにしてしまったことの罪の大きさに押しつぶされそうになって、和やかになりかけたムードの中で、あたしはポロリと涙を一滴、石畳の上に落とした。


「ふっ、古川さん!?」


「……でも、もう遅いんです。駿河はあんなにあたしを想ってくれていたのに……、絶対大事にするってあたしのこと抱いてくれたのに……、あたしは駿河から逃げてしまって……」


一旦落ち着いていたはずの涙は、タガが外れてしまったのか、どんどん溢れて足元にシミを作っていく。


泣いてる自分をごまかすように笑って見せるも、一向にそれは収まらなくて、あたしは笑っているのか泣いているのかわからない、グシャグシャの顔になる。


そんなあたしを、心配そうに見つめている店長。


その瞳があまりに優しすぎて、あたしは気付いたら彼に今置かれているこの状況を全て打ち明けていた。


店長に言ったところでどうにかなるわけじゃないけど、一人でずっと抱えていた気持ちを軽くしたかった。


里穂ちゃんの気持ち、彼女に協力すると言ってしまった約束、駿河と過ごしたあの日の夜、恋人ごっこの結末、そして里穂ちゃんの決意と、行き場を失ったあたしの想い。





ねえ、あたしはどうすればいいですか?






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