本当の気持ち-12
それにも関わらず、店長はまるでアメリカ人のように両手を上げて首を横に振っては
「だって、古川さんって『自分の気持ちを押し隠して耐えてるあたし、なんて可哀想』みたいな自分に酔ってるだけでしょ? 告白しろって言えば松本さんがいるからウダウダ、諦めろって言えば自分のしたことは本心じゃなかったウダウダ……。結局どうしたいのかさっぱりわかんないし」
と、小馬鹿にしたように笑う。
優しい店長の、初めて見るそんな意地悪な姿に、思わずあたしは声を荒げてしまった。
「だ、だって! 里穂ちゃんに協力するって約束しちゃったもん! 今さらあたしもやっぱり駿河を好きだから協力できませんなんて言えるわけないし、そんな状態でいけしゃーしゃーと駿河にやっぱり好きなんて言えると思います!?」
「だから、諦めろって言ってんのに……」
「それが出来そうにないから苦しいんですよ!」
また堂々巡りになった押し問答に、店長はすっかりウンザリ顔。
何度かポケットからスマホを出してはコソコソいじる彼は、恐らく奥さんとやり取りしているのだろう。
チラチラ腕時計を見るその姿すら、あたしの神経を逆撫でさせる。
挙句の果てには、
「もう、ウジウジ言ってないで諦めなよ、今なら独身の友達紹介してやるよ? 彼氏欲しいってついこないだまで言ってたんだし、もうそれでいいじゃん」
と、最終的にはずいぶん投げやりな解決策を持ちだしてきた。
いくら早く帰りたいからって、あんまりじゃない!
あたしはすっかり頭に血が上って、声が随分大きくなっていた。
「他の誰かじゃダメなんです! あたしは駿河じゃなきゃイヤなの! 里穂ちゃんに渡したくないの!!」
そこまで言って涙ながらに睨み付けると、店長はスマホをしまってから、突如鋭い目つきであたしを思いっきり睨み返した。
え! な、何!?
初めて見た店長の怖い顔に思わず身体が硬直する。
彼はそんなあたしに向かって思いっきり舌打ちをすると、
「だったら、こんなとこでいつまでもメソメソしてねえで、今からでもアイツにぶつかってこいや!!!」
と、あたしの声よりも遥かに大きな声で、怒鳴りつけて来た。