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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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本当の気持ち-1








平日の夜のアイドルタイム。


こないだの花火大会のような混雑は一切なく、BGMがやけに鮮明に聴こえるくらい、店の中は落ち着いた状況だった。


そんな中、店長はレジ締めをするためにスタッフルームへ。


あたしと駿河は気まずさを隠しながら、それぞれレジとフロアに分かれて接客をこなしつつ、締め作業に取り掛かった。


ディスペンサーという、アイスコーヒーが入っていたマシンを洗浄するため、部品を分解している駿河の横顔をこっそり横目で覗く。


いつもなら、あたしの視線を目ざとく察知しては「こっち見んなブス」なんて憎まれ口を叩くアイツが、一切こちらに気付いていない。


いや、気付いていないんじゃなくて無視してんだろうな。


そんな状況に、目の奥がツーンと痛くなる。


里穂ちゃんにはいつも通りの笑顔を向けていたのに。


夕方、里穂ちゃんがシフトを提出し終えて、店を出る時に駿河と交わした会話の様子が、思い出したくないのに勝手に再生される。


カウンター越しの駿河に何か話しかける里穂ちゃんと、それに対してほんの少し口元を緩めた駿河。


あの時のアイツの微笑が何度も脳内でリピートされてはあたしの胸をざわめかす。


一体どんな話をしたんだろう。


駿河と前みたいに戻りたい気持ちと、里穂ちゃんとの会話を知りたい気持ちがグルグル渦巻いている。


根っこにあるのは、とにかく駿河と何らかのコミュニケーションを取らなきゃと言う焦り。


頭の中は、とにかくどうやって駿河と話をしようか、そのことしかなかった。


里穂ちゃんの会話の内容が気になって、何度も駿河に話しかけようとチャレンジしかけては、ためらってばかりのあたし。


そんな中、駿河が突然あたしの方を見るもんだから、緑ダスターを握り締めていた身体は直立不動の状態のまま、しばらく動けなかった。






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