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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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揺るがない決意-7

「小夜さん。あたし、今日駿河さんに告白します」


いつものキャピキャピした高い声なんかじゃなく、落ち着いたトーンでゆっくり、はっきりそう言った彼女。


真一文字に口を結ぶその表情に、もはや迷いなど微塵も見受けられなかった。


またしても先手を打たれたあたしは、口を半開きにしたまま固まるだけ。


そんなあたしをチラリと見てから、彼女は静かに続けた。


「最初は、ミーハー気分でキャーキャー言ってただけなんです。ほら、駿河さんてちょっと怖いけど、見た目カッコいいじゃないですか」


「…………」


「でも、カッコいいのにチャラついてないとことか、真面目に仕事に取り組むとことか見てるうちに、どんどん好きになっていって……」


里穂ちゃんの一言一言が、とても共感できて、あたしは何度も頷く。


彼女と同じ、駿河に想いを寄せる身だから。


「こないだの花火大会の日に小夜さんを助けた駿河さんを見て、あの優しさをあたしのものにしたいって強く思ったんです」


あたしも、きっとあの時の駿河に心を鷲掴みにされちゃったんだよなあ。


あたしを酔っ払いから庇ってくれた、あの大きな背中を思い出すと涙がジワリと滲んでくる。


なんで、駿河の気持ちをジョークにしてしまったんだろう。


里穂ちゃんのことを思って、自分の気持ちを偽ると決めたのに、彼女の不退転の決意にまた胸が痛み始める。


覚悟を決めた彼女はそれは凛とした美しさがあった。


小さく尖った顎や、陶器のような滑らかな肌。黒目の部分は色素が薄くてハーフっぽくも見える。


普段は愛くるしくてたまらない彼女が、好きな人に告白するという強い意志を持てば、こんなにも強さを持った美しさが現れてくるのだろうか。


そんな彼女に無意識のうちに劣等感を感じたあたしは、引け目からか思わず目を反らすことしかできなかった。





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