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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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崩壊(性描写あり)-1

――ガシャ。


ゆっくりとユニットバスのドアを開けると、今まで籠っていた熱気と湯気が一気に廊下へと流れ出した。


シャワーで火照った身体は、エアコンの冷気に晒されているはずなのに、なかなか汗が退いていかないのは、単に暑いからだけではない。


きっとこの先の展開に、緊張と、不安と、ほんの少しの期待を抱いているから。


大判の柔らかいバスタオルだけを身体に巻きつけたあたしは、ドキドキし過ぎて飛び出しそうな心臓を抑えるかのごとく、胸に手をあてながら、部屋に繋がるドアを開けた。


「……シャワー、ありがと」


ボソリと呟くようにお礼を言うと、彼はテレビからこちらへゆっくり視線を移した。


ベッドの上で膝をついて横たわる彼の姿は、ボクサーパンツだけを纏った状態。


洗い上がった前髪がなんだかいつもよりも幼く見えて、こんな時なのにカワイイなんて思ってしまう自分がいる。


ちなみに彼の身体は、恥ずかしさ故にどうしても見ることが出来なかった。


そんな駿河はプツッとテレビを消すと、ムクッと起き上ってベッドのそばにあるローテーブルの上にリモコンを置いた。


部屋の中は、駿河の愛用と思しきマリン系のボディソープと、シトラス系のシャンプーの香りで満たされている。


あたしもまた、その香りに包まれながら、ゆっくりと彼の元へ足を踏み出しつつ、先刻の公園での出来事を思い出していた――。









花火をしていた公園で、ふとキスを交わしてしまったあたしと駿河。


今までの単なるバイト仲間という関係を崩壊させるきっかけなんて、ささいなあたしの独り言のせいだったのかもしれない。


一度触れてしまった唇は、火がついてしまった花火のように一気に燃え上がってしまった。


触れてしまっただけのキスは、やがて唇を何度も吸い、舌を絡め合うほどに互いを貪り合っていた。


普段はクールな駿河が見せる熱いキス。


彼の弾力のある柔らかい唇、妖しく蠢く舌、逃すまいとあたしの頬を包む手の大きさ。


男の子と恋人繋ぎすらしたことなかったあたしのファーストキスは、クラクラ眩暈がするほど激しくて、ただただ翻弄されるばかりだった。








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