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栗花晩景
【その他 官能小説】

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風化(2)-3

 肩に触れ、腰をさする。全裸の体が引き締まった。
「じっとしてて、お願い……」
「触るのもだめ?」
「だめ……」
「なんで?」
「だって……」
言いながら、体は逃げないし、むしろ私の胸に寄り添ってくる。

 横抱きにして引き寄せた。すると思いがけず和子が私の物を握ってきた。
「触らせて……」
(なんだ、その気があるんだ……)
心地よさが走って、さらに漲った。
「勃起でしょ?ホテルでもこうなってた」
「触ったの?」
「うん。寝てるのになるのね。面白かった」
和子の手が形を確かめるように動くので徐々に昂ぶってくる。

「感じちゃうよ」
「そうなの?わからないから……」
「経験ないの?」
「うん……ない……」
「でも触っても平気なんだ」
「うち、お父さんの裸、見慣れてたから」
「でも、触るのとは別だろう」
「小学生の時、お風呂で触ったことあるよ。ふふ……」
晴香や弥生と比べるとがっしりと骨格を感じる体であったが女の柔らかさには変わりがない。

 和子の顔は私の胸にあって温かい息が触れてくる。髪の香りが鼻腔をつく。
腕を解いて顔を覗くと眩しそうに瞬きをした。唇を合わせた。和子の喉が鳴り、握っていた手が離れて私の背に絡まってきた。静かな部屋の中で呼吸と口づけの音だけが聴こえている。

「キスも初めて。お酒と煙草のにおい……」
和子は溜息まじりに言って私に頬ずりをした。たまらなくなって胸に手を当てた。
「ペチャパイでしょ……」
「きれいだよ……」
のし餅ほどの膨らみしかない。乳首は小さい。だが、口をつけると身悶えして私の頭を抱えた。
「ああ……だめ……」
続けると次第に息遣いが乱れてはっきりと声を洩らした。
(このまま突き進む流れだ……)
しかし、手が下腹部に差し掛かると声が止み、脚を捩じって拒んだ。

「そこはだめ……」
「どうして」
「汚いから……」
「お風呂入ったじゃないか」
「そういう意味じゃないの」
「汚くないよ」
「女は汚いの……」
体は反応しているのに和子は頑なだった。それでも乳首を含んで舌を回し、薄い胸を揉みあげ始めると和子の力が抜けていく。
(ここまで感じているんだ……)
股間が開いた隙をみて指を滑らせた。
「いい!」
のけ反った直後、私を突き飛ばすように起き上がった。

「だめだってば!」
驚いたのは瞬間浸った秘泉である。夥しい液量。わずかに潜っただけなのに指はおろか掌にもぬめりがついている。
「触るだけだよ」
「だめよ……」
「感じないの?」
「感じるわ……すごく……」
「だったら……」
「今は、気持ちがだめなのよ。……自分でもよくわかんないんだけど、心と体が何だか別々みたいで、怖いの……」
声が掠れていた。

「今はっていうことは、気持ちが変わったらいいっていうこと?」
「うん。……その時は、好きにしていい……」
「わかった。それまで待ってるよ」
「ごめんね。気を持たせるみたいで。あたしみたいな女が言うのはおかしいわよね」
「そんなことないよ。……繊細なんだな」
「繊細でもないんだけど。……でも、あたしも女なんだな」
「そうだよ。こんなになってるんだぞ」
和子はふたたび硬い私に触れた。痺れるような刺激が広がっていく。

「男の人って、射精しないとだめなんでしょう?」
「だめってことはないけど、出したくなる」
「どうすればいい?擦るの?」
その言葉で急激に高まった。布団をはねて露にした。

「口でしてくれる?」
仰向けになった。
 和子は驚いたはずだが、反射的に身を引いたあと、黙って起き上がり、正座してやんわりと握ってきた。
「すごいね」
見つめる目は大きく開いている。
「どうやるの?」
「口に入れるだけでいいよ」
 先端に顔が近づき、唇に触れる直前に彼女の目は閉じられ、含まれていく様子を私は見守った。

 滑らかな布に包まれたような感触。亀頭部が納まって、そのままじっと動かない。それでも十分気持ちがいい。
「う……」
頬張った息苦しさからか、口中がすぼまった。意図したことではないだろう。それがとてもいい。思わず私が腰を動かすと受け止めるように吸い込み、応じてくる。
(ああ……和子……)
一心に咥え続ける彼女の横顔がふとどこかで見た仏像に似ていると思った。突き出した尻の曲線がきれいだ……。

(あ……)
いよいよの時は抜くつもりでいたのだが、急速に差し迫って堪えられなくなった。
「出る……」
迸り、和子の顔が険しくなった。が、離さない。だけでなく、手に力を込め、噴射に合わせるように扱き始めた。そして顔まで上下させた。
「うう……」
快感の波濤にもまれ、漂った。気が遠くなるほどの放出感であった。

 やがて起き上がった和子は、口を拭い、何度か喉を鳴らして咳払いをした。
「変なことさせちゃったな……」
「びっくりした。……飲んじゃった……。平気だよね」
指先のにおいを嗅いでいる。
「においするだろう?」
「変わったにおいね。どこかで嗅いだみたいな気がする」
「栗の花に似てるんだ」
「そう……」
和子にはピンとこないようだった。


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