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栗花晩景
【その他 官能小説】

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風化(2)-2

 食堂で夕食を食べながら、和子が今日のコースをすでに歩いていることを知った。
「去年の夏。汗びっしょりだった」
「なんだ、言ってくれれば他のコースにしたのに」
「一人とは違った楽しさがあるからいいのよ。季節によっても景色がちがうし、新鮮だったわ。あなたと一緒だったからかしら。ほんとよ」
「そうならいいけど……」
「そうよ。またどこか行こうね」
素直な笑顔に困惑を覚えた。
 松原湖で同室になったのはいわば必然の流れの結果である。今回は不純な迷いが歩き回っている。

 ビールを和子にすすめると、一口、二口と口にしただけで、
「やっぱりだめ。おなかが熱くなってくる」
驚いたのはそれからものの五分も経たないうちに顔が赤くなってきた。
「ほんとに弱いんだな」
「これ以上飲むと心臓がどきどきしちゃう。一度短大の時に経験してるから」
まるで風呂上がりのような顔になった。
「だいじょうぶか?」
「うん。ここでやめとけば……」
桜色の頬は私にとっては色っぽさとなって香ってくる。

 布団を敷いたのは和子である。食後、部屋に戻ってくると、もう一度風呂に行ってきたらどうかとしきりにすすめる。深く考えずに温まってくると、二組の布団が並んでいた。
「誰か敷きに来たの?」
「ここは自分で敷くのよ。だからお風呂に行ってもらったの」
「俺がいたらまずいの?」
「だって、なんだか恥ずかしい……」
和子が照れた様子を見せるのは珍しい。やはり年頃なのだ。
(意識している……)
私を男として認めていることになる。どういう心境の変化なのか……。

「布団で話さないか?」
しばらくテレビを観たあと言ってみた。
「うん……」
明るい返事ではあったが、いつもの弾んだ調子ではない。

 布団にもぐり込むなり、和子はもぞもぞと動いて浴衣と下着を枕元に押し出した。
「やっぱり裸?」
「だって、気持ちいいんだもん」
「俺も真似しようかな」
「ふふ、いいかも……」
本当に脱いで横になると、和子が私の名を呼んだ。
「何?」
目が合うと視線を外し、笑いはなかった。

「ね、今日、あたしとセックスするつもりで来た?」
どきっとした。が、否定はしなかった。和子に嘘をつきたくなかった。
「ちょっと、思った。……分かった?」
「そんな気がした……」
「だますつもりじゃなかったんだ。同じ部屋にしたのはその気もあったんだけど、松原湖でもそうだったから、いいかと思って。厭だったら無理になんてしないから」
「厭じゃないけど、出来ないと思うから、悪くて……」
「出来ないって、……生理?」
「ちがう……」
「好きな人がいるのか」
「ちがう……」
「じゃあ、どうして泊まったの?」
「うん……」
和子は口を噤んだ。話しているうちに勃起していた。私は体を起こし、
「そっち行っていい?」
和子は返事をしなかったが、拒む様子も見せない。滑り込むように体を入れた。


 
 


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