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『正夢』
【青春 恋愛小説】

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正夢〜仲間〜-5

ならば、まともに食らわなければいい…!

ゴッ!!


確実に入った、確実に俺の蹴りは翔さんの顔面に入ったはずなんだ!なのに…。
右足がもはや自分のものじゃない。
「足に頭突きっすか…」
顔で一番固い額に打ってしまった…。
足を戻すが、力が入らない。
「やりますね…」
翔さんは不敵に笑いながら近付いてくる。
拳を振り上げ呟いた。「俺の勝ちだ」
負けちまったか、ちくしょう…。

ゴキッ!!

そこで俺の意識は途絶えた。


目の前で倒れている鹿見をみて昔を思い出す。入学したてのころ、俺もこいつの様にギラギラとして喧嘩ばかりしていた。そこで渉と出会い、恵と珊瑚に説得され、今の俺がいる…。
止められていた俺が、今度は止める番か…。時間の移り変わりを感じる。

「う…」
鹿見がくぐもった声を上げながら、起きた。
「お目覚めか?」
軽く言葉を掛ける。どうやら意識ははっきりしているようだ。
「強いっすね…。完敗です」
「年季が違うんだよ」
「そうみたいっすね」そう言いながら軽く笑みを浮かべる。どうやらそれほどひねくれてはいないようだ。
こいつの意識が戻ったところで説教をかます。
「お前とやりあったお陰で、彼女とのお祝いの時間に遅れちまったじゃね〜か!」
「あ、すいません…」
「罰として、お前も一緒に事情を説明しろ!」
「は?一緒に…?」
「早く来い!遅れちまう!」
「…はい!わかりました!」

鹿見と二人で恵の家に向かう途中に急な頭痛に襲われる。
「翔さん?」
クラス替え、みんな一緒の教室…。
そして廊下にいた鹿見…。
そして、思い出す。
「また、正夢だってのかよ…」
「なにがです?」
「いや、なんでもない」
恵の家の前に着き扉を開けると、不思議な匂いが漂ってきた。
「酒臭くないっすか?」
確かに…。とりあえずリビングへと向かう。リビングへ入ると、案の定の光景が広がっていた。
転がる酒瓶…。渉に抱きつきながら寝ている珊瑚…。そして一人缶チューハイをあおる恵…。
「パーティーじゃなかったのかよ…」
「おぉ!翔…ってそいつは…」
「ちわっす…」
ことの経緯を渉に説明する。どうやら納得してくれたようだ。
「んじゃあ、とりあえずお前達も飲めよ!」
渉がコンビニの袋から酒を取り出す。
「サンキュ」
「いただきます!」
酒が口の中に入ってくる。切れたところが痛いが、まぁ気にしない。
「痛っ…」
どうやら鹿見もそのようだ。


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