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『正夢』
【青春 恋愛小説】

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『正夢』-1

1 窓から射す西日が部屋を照らしている。ここは何処だろう?誰かが顔をおさえて倒れている。体が熱い。何故だろう、なにも考えられない。
後ろから泣き声が聞こえた。振り返ってみると女の子が泣いている。顔はうつ向いていて見えないが、見たことがある女の子。

その時、ふと女の子のが顔をあげこちらを向いた。お互いの目が合う。泣いていたのは………。


♪〜〜

『ピッ』

携帯のアラームを止め、まわりを見る。
「夢か…」夢なんか久しぶりに見た気がする。一体なんの夢だったのか。いくら考えても思い出せなかった。
「翔(しょう)〜!早く起きないと学校遅れるわよ!」
俺の思考は、母親の一声で中断された。

顔を洗い、一通り身支度を整え家をでる。少し歩くと後ろから声がした。
「おはよう、翔ちゃん」
「おぉ、おはよう」
話しかけてきたのは近所に住んでいる高瀬恵(たかせけい)、幼馴染みであり、俺が片想いをしている女の子だ。

「ねぇ翔ちゃん、あと一週間で冬休みだし、休みになったらどこかいこうよ?」
「いいな、いつものやつらで旅行にでもいくか?」
「それいい!そうしようよ〜!」

俺のまわりをちょこちょこと歩く恵。恵は身長が小さく、160cmもいっていない。俺が173cmなので、俺が普通に歩くと小走りになりながら話す。そんな仕草がとても可愛い。

だけど、いつまでもこのまま今の状況が続くわけがない。恵に彼氏ができたらもう二人で一緒に歩くこともなくなるんだろう。そう考えると複雑な気持ちになった。
そんなことを考えながら学校についたころにはもう夢のことは頭から消えていた。


机に座り授業が始まるまで寝ていようかと思っていると、うるさい声がとんできた。

「翔〜!また高瀬と一緒かよ!いいなぁ〜」
「朝からうるせーよ」
このうるさいのは渉(わたる)俺の数少ない友達だ。

「そうだ渉、冬休み暇なら旅行にでもいかねぇ?恵たちと一緒にさ?」
「いいねぇ!ちょうどバイトやめて遊びたかったんだよね!」
そんなことを話していたら担任が入ってきて授業が始まった。


学校が終わり、恵と帰ろうと思い隣のクラスにいくと、恵の姿がない。その時、教室の窓側に知り合いを見つけた。
「おい、サンゴ」
「翔?どうしたの?」
この女の子は珊瑚(さんご)恵と一緒に俺たちとつるんでいる。恵の天然な性格とは真逆でしっかり者ななやつだ。
「恵を見なかったか?」そういうとサンゴは苦い表情をして言った。

「私も探したんだけど、クラスの子に聞いたら西村と一緒にどっか行ったって…」

「…あの女たらしと!?」

西村は俺たちの学校一番の女たらしだ。手を出す早さは有名で、結構嫌ってるやつも多い。
「うん…。あの子あいつのこと知らないからついていったんじゃ…」
「どこ行ったか分かるか?」
「多分音楽室だと思う。今日部活休みだしだって言ってたし」
「わかった。じゃあ行ってみるよ」

サンゴの言葉を聞いて俺は音楽室に向かった。途中、すれちがいざまに男子生徒の話が聞こえた。
「西村のやつ、今度は高瀬で遊ぶ気かよ、音楽室に連れこんでるらしいぜ」
「いいなぁ〜俺も混ざりたいよ……」
そんな言葉を耳にして、俺は自然に早くなる自分の足を抑えられずに走った。朝の自分の考えが的中しないことを祈りながら……。


階段を登り、音楽室に向かう。扉の前に立った時、ガラスの向こうに人影が見えた。ためらわずに扉を開ける。部屋のなかのその光景は俺の頭をカラッポにした。


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