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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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なんか、ヘンですよ?-9

すると、駿河はおじさんを思いっきり睨み付けた。


「……コイツを散々バカにして笑って、あげくセクハラまでしてたじゃねえか」


「駿河……」


多分、駿河はキレている。


遅番ばかりしていると、たまに酔っぱらったお客さんが迷惑行為をしてしまう場面に遭遇することがある。


吐いちゃったり、店の物を壊してしまいそうになったり、他のお客さんにちょっかい出したり。


駿河はそういう場面に遭遇しても、いつでも下手に出ながらなんとか失礼のない態度でお客さんに注意を促していた。


その駿河が、あたしをバカにしただけの、お店側にしてみれば少しめんどくさい程度で済むようなこのおじさんに、スタッフじゃなく「駿河翔平」として怒りを露にしていたから。


こんな緊迫した場面なのに、あたしの胸はなぜかドキッと高鳴ってしまった。


「ああ!? お前、客に向かってその言い草はなんだ! そんな言葉遣いをお客様にしていいと思ってんのか!」


駿河の言葉を聞いたおじさんは、ガタンと立ち上がったかと思うと、突然彼の胸ぐらを掴んだ。


キャアッとどこかで悲鳴が上がる。


「じゃあ、客だからって何言ってもいいのかよ」


「ああ!?」


「お前の無神経な態度が、コイツをどれだけ傷付けたのかわかってんの?」


駿河もヒートアップしてきたのか、声がどんどん大きくなる。


「無神経なって、オレは見たまんまのことを正直に言っただけだろ。花火大会だってのにオトコがいないからアルバイトにいそしむしかすることなさそうに見えたから」


そして再びあたしにバカにしたような視線を向けるおじさん。


咄嗟に拒否反応が出て、慌てて顔を俯けた。


すると、駿河はクッとバカにしたように笑った。


「……コイツ、ちゃんとオトコいますから」


「「は?」」


不本意ながら、おじさんとハモってしまう。


胸ぐらを掴んでいた手が緩んだのか、駿河はそっとそれを払いのけると、


「コイツは俺の彼女だから、馴れ馴れしく触んないでください」


と、意地悪そうにニヤリと笑った。


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