なんか、ヘンですよ?-16
「代わりにやっといてくれる?」
あたしがわざと上目遣いで胸の前で手を組んで見せると、ポカッと頭を叩かれた。
「気持ちわりい顔で甘ったれんな、バカ」
ため息吐いて暴言を浴びせる駿河だけど、シシシと笑いが込み上げてくる。
なんでだろ、さっきのおじさんにバカにされた時は悔しくて泣きたかったのに、駿河の暴言は自然と顔がにやけてくる。
だって、ホラ。
「仕方ねえ、コツを教えてやるから来い。一回しか言わねえからな」
「へへ、やったあ」
なんだかんだ言って、困った人には手を差し伸べてくれるから。
今まで気付かなかった駿河の優しさ。
数メートル先を歩く大きな背中を見てると、自然と顔も綻んでいく。
こないだまではあんなに憎たらしいと思っていた感情は、いつの間にか消えてなくなっていて、込み上げてくるのは締め付けるような胸の痛み。
里穂ちゃんの恋心。駿河の優しさ。あたしの胸の苦しさ。
ぐるぐる混ざってよくわからないこの気持ちは、さしずめ今も掠める夏の夜の匂いのようだった。