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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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なんか、ヘンですよ?-15

駿河と里穂ちゃんが付き合ったら、さぞお似合いのカップルになるだろう。


スウィング内でカップルが誕生すれば、周りもめちゃめちゃ喜ぶはず。


次の飲み会では、二人は冷やかされっぱなしになって。


そんな姿を想像していたら、なぜか胸がズキッと痛くなった。


デニッシュの補充を終えたあたしは、板重と呼ばれるパン屋さんでよく見かけるプラスチックのケースを台車に重ねながら眉をしかめた。


別に二人がつきあったって関係ないじゃないか。


友達に好きな人ができたとか、彼氏ができたとか、カミングアウトされた時は、それこそ驚きで一瞬固まってしまうものの、すぐにテンションが上がって、キャーキャー騒いで冷やかしてきた。


なのに、里穂ちゃんの好きな人が駿河だと、なんでこんなにテンションが下がってしまう?


晴れない気持ちのまま、台車を入口の脇に置いた所でごみ捨てを終えた駿河と出くわした。


「あっちい〜」


駿河が外から入ってくると、生暖かい夜の空気がふわりと店の中に入ってきた。


ムワッとした排気ガスの臭い、隣の焼肉屋の肉の焼ける匂い、どこかで誰かが花火でもしているのか、火薬の匂い、駿河の制服から香る柔軟剤の優しい匂い。


夏の匂いは、いろいろ混ざってよくわからない。


「……なんだ、ジロジロ見んな」


相変わらずあたしに冷たい駿河節。


「あ、ご、ごめん」


「フロア締めは終わったか?」


「うん、あとは看板と灰皿を中に入れるだけ」


「ああ、そういやお前、看板しまうの苦手なんだっけ」


スウィングの店の入り口には、キャスターがついた高さ1メートルほどの箱型のスタンド看板と、灰皿が置いてある。


灰皿は軽いからいいとして、このべらぼうに重い看板がなかなか曲者なのだ。


スウィングは、ビルの一階をテナント利用しているんだけど、このビルがなかなか年季の入っているせいか、バリアフリーになっておらず、このスタンド看板をしまう際には三角形の台を使ってスロープを作り、それを利用して店の中にしまわなくてはならない。


キャスターもついてるし、一見何てことない作業なんだけど、看板が重いのと傾斜が急なことが災いして、女の子には重労働なのだ。









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