なんか、ヘンですよ?-14
「さっきの駿河さん、かっこよかったですね」
里穂ちゃんの視線の先には、ゴミを捨てに店の外に出て行った駿河の後ろ姿。
うっとりとした目付きは、相当駿河にまいったと見た。
あたしはと言えば、
「え、あ、いや……そうだね」
と、変にどぎまぎしてどもってばかり。
里穂ちゃんの言葉に同意するのが何だか気恥ずかしくて、意識するまいと、かえって意識しちゃってる。
そんな挙動不審なあたしをよそに、里穂ちゃんは目をキラキラさせてあたしを見つめた。
「小夜さん! あたし、決めました! 今日、バイトが終わったら駿河さんを飲みに誘ってみます!」
「え!?」
声高らかに宣言する里穂ちゃんにビックリして、思わず持っていたアップルデニッシュを落っことしそうになった。
床に落ちる寸前でなんとかキャッチしてから里穂ちゃんを見ると、なんとも小悪魔チックな笑み。
あたしは慌てて口を開いた。
「り、里穂ちゃん! 今から飲みに誘うってことは、終電で帰れないってことなんだよ!」
「わかってます」
「帰れないってことは、一夜を過ごすんだよ! いくら駿河とは言え男なんだし、お酒飲んだら襲われちゃうかもしれないんだよ!」
里穂ちゃんを止めなきゃ! こんな可愛い娘が駿河に襲われちゃったら大変だ!
でも、里穂ちゃんはケーキの補充で使ったトングをカチカチ鳴らしながら、ポッと頬を赤らめた。
「あたし……、駿河さんなら、そういう展開になっても後悔しません。好きだから」
恥じらいつつも、きっぱりそう言い切る里穂ちゃんを見て、あたしはなぜかズキッと胸が痛くなった。
「だから小夜さん、応援して下さいね」
ニッコリ笑った里穂ちゃんは、今度はカウンターの隅にある、ソフトクリームマシンの洗浄に取り掛かり始めてしまった。
鼻唄を歌いながら作業に取り掛かる里穂ちゃんの華奢な後ろ姿。まっすぐで細い脚や、折れそうな白い腕。
ホント、可愛い……。
こんな完璧な女の子に好きって言われたら誰だって嬉しいに決まってる。
ましてや、一夜を共に過ごす覚悟まで決めてるなら、この誘いは乗らなきゃ男じゃない。
ふと頭に過るのは、極上の里穂ちゃんスマイルを向けられ、顔を赤くする駿河の顔。
タジタジになってる駿河も、まっすぐに想いをぶつけられたらきっとそれに応えるはずだ。
でも、もしそうなったら……?