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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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なんか、ヘンですよ?-13

「だから、店長はきっと俺の気持ちわかってくれると思うから隠し事はしない。もちろんあの客からクレームが来たら、ちゃんとペナルティは受けるつもりだし、そもそもそれなりの覚悟を決めてああいう行動したんだ。だから、無理にごまかさなくていいからな」


「駿河……」


「それとも俺がクビになったら寂しい?」


「…………!」


ニッと笑う駿河に、またボンッと顔から湯気が出てくる。


いつもならすぐさま否定してやるのに、パクパク魚みたいに口を動かすだけ。


駿河はそんなあたしをフッと笑って、ひとまとめにしたグラスを重ねたトレイに載せ、それを持ち上げた。


「なんて、冗談。ホラ、客ももうみんな帰ったしフロア締めやるぞ、アホ」


いつもの駿河に戻った奴は、カウンターの返却口にトレイを置いてから、ほうきとちりとりを持ってフロアの掃除に取り掛かり始めた。








いつもと変わらない仕事なはずなのに、なんだかいつもと違う。


なんだかアイツの姿をやたらチラチラ見てしまう。


こないだから駿河には調子を狂わされっぱなしなのだ。


……あたし、なんかヘンですよ?


椅子から落ちた時に助けてくれた腕の感触。酔っぱらいからあたしを自分の身体の後ろに隠してくれたあの背中。


ふと吉川くんが昼間に言った言葉が過る。


――小夜さんって鈍いって言われるでしょ。


ねえ、それってどういうつもりで言ったの?


まさか、まさか、まさか……ねえ?


フロアの隅でごみ袋の口を絞る駿河の横顔を見ては、なんだか恥ずかしさが込み上げて来て、叫びたくなる。


たまに、ふと駿河と目が合って「手が休んでるぞ、ボケ」なんて口パクでバカにされても、うまく言い返すことができない。


いやあ、マズイってあたし!


一人で顔を赤くしながら、発注分のデニッシュを、レジ横のショーケースの上にあるかごに並べていると、ショーケース内のケーキの補充をしていた里穂ちゃんがニコニコしながら口を開いた。







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