投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

栗花晩景
【その他 官能小説】

栗花晩景の最初へ 栗花晩景 54 栗花晩景 56 栗花晩景の最後へ

春雷(1)-4

 待ち合わせの駅前に現れた弥生は服装からして挑発的であった。恵子に負けず劣らずのミニスカートから黒いストッキングに被われたむっちりした太ももをのぞかせ、ジャケットの下に着ているブラウスは下着が透けていて、うっすらとブルーの色までわかる薄いものである。昨日とは別人の印象である。

 座席に落ち着くと笑みを浮かべた横目を向け、甘い香水の香りが流れてきた。
 国道を北上しながら、私は緊張の連続だった。一人で気の向くまま運転するのとはまるで勝手がちがう。弥生の話にも相槌を打つのが精いっぱいであった。

 弥生は饒舌で、ほとんど途切れることなく喋り続けた。山岸が付き合ってくれとしつこいと言って嗤ったり、今泉が学園祭の日に事故を起こしたことを蒸し返して、大迷惑だったとなじったりした。少し性質が悪いと思いながら聞き流していたが、あとから考えると彼女も昂揚していたのかもしれない。

 筑波山が間近に迫ってきた時、弥生が真面目な口調になった。
「晴香とはほんとに何でもないのね?」

昨日からの経緯からいまさら否定もできず、曖昧ながらも頷かざるを得なかった。
 弥生が煙草に火をつけ、私の口に咥えさせた。自分も煙を吐き出して、
「あたしと付き合う?」
心に明らかな動揺が起こって言葉に詰まった。だが、ここで断れば弥生を抱く機会を失ってしまう。躊躇の後、私は心にもないことを言ってしまった。
「前から、好きだったんだ」
「また、そんな」
「ほんとだよ。タイプなんだ」
「男ってみんなそう言うのよ」
「そんなふうに言われたらどうしようもなくなっちゃうな」
「あたし、晴香みたいに清純じゃないわよ」
「知り合ったのが先だったからな」
「いいわ。あなたいい人みたいだし」
晴香の顔を眼前の性欲が消し去った。

 弥生がどんな男性遍歴を経てきたのかは知る由もないが、半日一緒にいて、作為的とも思える行動に何度も驚かされた。
 ロープウェイの中で他の客がいるにもかかわらずいきなり私の腰に手を回してきて脇腹をくすぐってきたり、頂上で風が強くなると、
「わあ、寒い。あっためて」
首に腕を巻きつけてきたりした。
 初めは戸惑っていた私もそのうちに彼女に意識的に触れるようになっていった。

 そんな調子だったからホテルに入るのにもさしたる逡巡はなかった。ハンドルを切ってそれとわかる入口に乗り入れても弥生は妖艶な笑みを絶やさず、むしろ期待していたような目つきをみせたものだ。

 ところが行為に移ると様子がちがった。身を縮めて恥じらいを見せ、それまでの大胆さが嘘のようにぎこちなくなったのである。演技なのかと疑ったが、そうではないようで、目を閉じた表情の硬さは緊張を表していた。その日の振る舞いからかなり遊び慣れた印象を持っていたので拍子抜けするほどであった。

 口付けして肌を合わせると、もう体は漂うばかりである。終始受け身で、経験のさほどない私でも冷静に観察できた。求める反応、没入への積極さなら晴香の方が激しい。挿入の時も迎え入れる態勢がまるで見えず、処女のように腰を引く動きさえみせた。

 ペニスを差し込み、弥生の顔がわずかに歪んだ。
「ああ……」
押しこみ、ゆっくり抜き、また根元まで差し入れる。
「あ、ああ、あう……」
苦悶の顔を見下ろして眺める快感は、性感のみならず征服欲によって増幅される。亀裂を割って貫いているペニスが自分でも頼もしく思う。
 めり込んだ一物によって弥生の体はのけ反って身悶えし、悲鳴に近い呻きを上げる。
「うう……」
そのまま中に放ったのは彼女もわかっただろうが、何も言わなかった。
 部屋を出る時、弥生が私の首に腕を絡ませてきた。
「キスして……」
倦怠感が全身を被っていて鬱陶しかったが弥生はなかなか唇を離さなかった。


栗花晩景の最初へ 栗花晩景 54 栗花晩景 56 栗花晩景の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前