おまけ2 フェアトレード・エモーション*性描写-1
*メルヴィンの日記より抜粋
3月14日
帝国会議終了。
イグレシアス領より提出した「獣人雇用法」が無事承認される。
獣人の完全解放にはまだ遠いが、一歩でも進んだことは確かだ。
3月15日
宿舎から帰宅後、断られるのを覚悟でルビーに結婚を申し込んだ。
あれほど緊張したのは、生まれて初めてだし、これからもきっと無いだろう。
返事を待つ数分が、何時間にも感じた。
なのにルビーときたら、「船のチケットが勿体無い」だと!?
まぁ、チケット代を誰かの役に立てたいとは、優しいアイツらしい考えだし、慌てて返事をやり直そうとしている姿が、ものすごく可愛かったから許す。
今まで忙しかった分、明日から五日間の休暇だ。
3月16日
朝、俺の隣りで起きたルビーは、寝惚け顔で驚いていた。どうやら昨日のことを思い出すまで、少し間があったらしい。可愛すぎる。
もう一度押し倒したいのを必死に我慢し、いつもと変わらない振りをして起きたのに、ウォーレンとタバサには有頂天なのが早速バレた。
一方でルビーは、着替え終わったら普段と本当に変わらない気がする。
朝食後、両親に婚約報告の手紙を書いた。
兄上たちには、ウォーレンが昨夜のうちに報告し、明後日はセオドア兄上が屋敷に来る。フランシスカからは、ルビーのドレス類を預かってきた。
ルビーは今日から、ウォーレンとタバサに貴族の作法などを習う。
俺は家を継ぐわけでもないから、公の場にはそう出なくて済むが、最低限の作法を知っておく必要はあるだろう。
着なれないドレスで一生懸命お茶を飲む姿が、相変わらず可愛い。
しかし、明後日は俺の婚約者として、セオドア兄上と会うんだと言ったら、とたんに緊張したようだ。手を滑らせ、茶を引っくり返した。
夜。俺が夜着に着替えたら、ルビーは普通に「お休みなさいませ」と言って部屋を出て行こうとした。
待て。
どこに行くつもりだと聞いたら、キョトンとした顔で、自分の(小間使いの時から使っている)寝室だと答えられ、ショックだった。
……若干、ルビーと俺の温度差を感じるのは気のせいか。
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昨夜、ルビーはちょっと失敗をした。
メルヴィンが寝るようなので、自分も部屋に引き揚げようとしたら、涙目で(しかもややキレ気味に)引きとめられたのだ。
それでようやく、これから寝室はメルヴィンと一緒だと知った。
しかも暗黙の了解とかいうその雰囲気を、屋敷で自分だけまるで気付いてなかったのが判明し、ややショックだった。
明日の事を考えると、こういった空気の読めない失敗をしないか、気が重い。