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栗花晩景
【その他 官能小説】

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芽吹き編(1)-4

「四十分経っちゃったわよ。交替するんでしょ」
クミだった。怒ったような口調である。少し後ろに古賀が立っていた。
 私は立ち上がってミチから距離をとった。臭いを知られたくなかったからだ。パンツの中で萎えたペニスがぐっしょり精液にまみれているのがわかる。できればこのまま帰りたい気持ちであった。

「時間がないわよ」
クミは私を促して繁みの方へ歩き出した。射精後の虚脱感と下着の不快感がまとわりついていて重い気分であった。

 クミは木を背にして腰を下ろし、私を見上げたままブラウスのボタンを外した。間を開けて膝を抱いて座った私が動かないでいると、スカートの裾を摘まんで、
「臭う?」と訊いてきた。どきっとした。私の『臭い』がすると言ったのかと思ったのだ。だがそうではなかった。
「あの子、出しちゃってさ。スカートにべっとりよ」
「入れたの?」
「ちがうわよ。握ってくれっていうから。そうしたら出ちゃってさ。急なんだもん。いやだわ」
ずいぶん大胆な要求をするものだと驚いた。自分にはとても言えない。だが、おかげで救われた。臭いはある程度ごまかせる。

「時間ないわよ」
クミが時計に目を近づけて言った。
 にじり寄って胸に手を伸ばすとブラジャーを下にずらして乳房を突き出してくる。ミチより小さくて掌に包みこめた。
(柔らかい……)
乳首を摘まむ。クミは身をよじった。
「握る?」
「いや、いいよ」
ふふ、と笑ったのは冗談を言ったようだ。

 胸から手を太ももに移動する。
「待って」
腰を浮かせて下着を足首まで下ろし、膝を立ててスカートで被うと脚を開いた。その間の姿態の動きはとても悩ましいものだった。パンツを脱ぐということが刺激的であった。萎えていたペニスがむずむずと蠢いた。

 内股を伝い、その部分に手を当てた。陰毛が掌に柔らかい。汗でしっとりしている。
(ここがオ○○コだ……。本当に触ってるんだ……)
湿った割れ目をなぞると指が滑り、少し押し込んだだけで指が入った。
 内部のなんと柔らかなことか。いっぱいまで入れてもなお余る。クミが息を大きく吐いて顎を上げた。気が焚きつけられて指を抜き差しした。
(ああ……)
キスをしようとした時、恍惚への道は遮断された。
「おしまいよ」
時計を指し示してクミは脚を伸ばした。そして立ち上がると手早く下着を上げ、ブラウスのボタンを留めた。いま性器に指を入れられていたのに何事もなかったような仕草である。
(平気なんだ……)

「付き合ってる人、いるの?」と私は訊いた。あまりに平然としているので時々触らせてもらえそうな気がしたからだ。
「あたし?いるわよ。何で?」
「可愛いからそうだろうな」
「なによ、口説いてるの?」
「いや、ちがうけど……」
スカートをはたいていると古賀とミチがやってきた。

「じゃあ、あたしたち、京成で帰るから」
クミはそれだけ言うとミチと連れ立って歩いていった。私たちの帰り道も途中まで同じなのだが、一緒に行く気になれず、二人の影が見えなくなるまで佇んでいた。
 覚めやらぬ昂奮の余韻と重い疲労感が体に満ちていた。中指を嗅ぐとつんと酸味がかった臭いがした。
(ミチとクミの臭い……)
指にはまだ感触が残っていて、私は何度も指を鼻先に持っていった。


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