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沈む町
【大人 恋愛小説】

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ソーダアイス-1

平日のショッピングモールは閑散としていて、店員のやる気もないようだ。
いつもなら、アパレル業のしつこい接客は苦手で、店員から逃げるように買い物を終わらせるのだが、今日は違った。
かわいいけど気合いの入ってないような服、かわいいけど気合いの入ってないような服、と頭の中で呟きながら、ショップとショップの通路を歩いてばかりだった。久しぶりのショッピングは、店内に足を踏み入れるのさえ少し躊躇してしまう。
ワンピースが楽かなあ、でも着まわしが効かないし、と何やら考えながら歩いていると、ナチュラルなデザインのセレクトショップが目に入った。その店頭にディスプレイされていた、キナリのブラウスに、目が釘付けになって、歩みを止めてしまった。
胸元は大好きなスクエアネックで、袖に繊細なギャザーが入っている。中世の女性貴族の、普段着みたいなブラウスが、私は大好きなのだ。それで、紅茶染めみたいなカラーだとなお良い。
それはもう、私が裁縫の技術を手に入れたら作るだろうというようなブラウスだった。
結局、一目惚れしたそいつを、試着もせずに買ってしまった。

家に帰る途中、試着せずに買ってしまったことを急に後悔し、怖くなってきた。
決して痩せているわけではない私は、試着せずに洋服を買っては、サイズが合わずに結局1度も着ないままタンスの肥やしにしてしまうことが、多々あった。
家に帰り着いてからも、どのパンツと合うかなんて考えたくもなく、洗濯をし、洗い物を片付けて、コーヒーを飲んでから、やっと、部屋の隅に投げるように置いた、かしこまった紙袋のテープを剥がした。

自分の部屋で見るそのブラウスは、さっき店頭で見たときよりもだいぶ小さく感じた。
恐る恐る袖を通し、ボタンを留める。

悪くない。
ボタンも弾け飛びそうではないし、袖も余裕がある。
惨めな気持ちに潰されそうなのをこらえて、ほっと胸をなでおろした。

去年の夏に買った、ハイウエストのデニムがきっと合う。
ここ最近のファッションの流行り廃りは激しい。うっかり乗せられてトレンドアイテムを買ってしまうと、次の年にはもう古い感じがして、恥ずかしくて着られなくなってしまう。
これならもう新定番って感じだし、大丈夫だろうと、タンスの奥からデニムを引っ張りだして、いそいそと履く。
お腹がちょっときつい。やっぱり少し、太った。
どうして人間は、普通の生活をしているだけなのに、太るのだろう。
深いため息で、私の休日は終わりを迎えた。

明日からダイエットだ。




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