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沈む町
【大人 恋愛小説】

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浮かれる町-2

夏はまだまだ先だと思っていたのに、もう花火の時期か。
年を取ると歳月が過ぎるのが早くなるって、お姉ちゃんが昔言っていたけど、本当にそうだ。
最近、1年の巡りが本当に早い。
今年のお花見を思い出そうとすると、去年のお花見の思い出が頭をよぎるくらい。



職場の人たち大所帯で大宴会、って感じのお花見で、上司に飲まされまくったわたしは、気分が悪くなって公園のベンチで夜風で涼んでいた。
「おっ、ここ超涼しいな」
ビールを片手に、少しふらつきながら、ドスンと隣に座ってきた長身の男の人。
その拍子に私が持っていた酎ハイが少しこぼれて、彼はあわてて自分の着ていたネルシャツを脱いで、私の服とベンチをふいた。
「いいですよー、気にしないで。洗えば落ちますから。」
「ごめん!赤ワインじゃなくてよかったな。」
「あるんですか?赤ワイン」
「あるよ」
彼は紙パックの安いワインをそれごと持ってきて、
「こいつ需要ないから、二人で飲んじゃおうぜ」と子供みたいに笑って言った。
ぬるいワインを、二人でラッパ飲みして、二人ともすごく酔っぱらって、他愛ない話をして笑い転げた。
偶然私も彼も、次の日が早い勤務だったから、上司たちに二次会に連行される前に、こっそり帰った。
社会に出て初めての宴会で、二次会もちょっと気になったけど、お酒のまわった頭の中ではっきりと、この人ともっと一緒にいたいと思った。
あの日から、私の頭から離れない人。
きっと誰といても楽しい人なんだ。
あの日、私は一瞬でも、この人とこんなに距離が近くって、私は特別だなんて思ってしまった。
でも日々を過ごすうちに、それは彼の毎日の行動のうちのたった一部分でしかないんだと分かった。



こんなに胸が高鳴ったのはいつぶりだろう。
好きな人と、花火大会。
二人きりじゃないけど、十分だ。



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