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飼育
【ロリ 官能小説】

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その(1)-6

 それから間もなくのこと、突然友紀子から結婚の話が切り出されて山野は戸惑い、動揺した。
「山野さん、結婚を考えたことある?」
カラオケボックスでのことだ。唐突すぎて返す言葉も咄嗟に浮かばない。
「あたしはあるの。そういう人がいるの。現在進行形」
「そう。好きな人がいるんだ……」
「誰だかわかる?」
「いやあ、それは……」
「わからない?山野さん。あなたよ」
その時自分はどんな顔をしていただろうと後に思った。うろたえ、困惑、懐疑、いくつもの想いが瞬時に交錯して笑ったような気もするし、ただ呆然としていただけのようにも思える。

「そんな……まさか……」
「あたしを嫌い?」
「嫌いなんて、そんなこと……」
「どう想ってくれてるの?」
「……好きだ」
「それなら問題ないわね」
返事に窮して押し黙ったのは、あまりに話が性急で混乱したこともあったが、噂話が頭を過って金のことが引っかかっていたからでもある。
「俺、金はないよ……」
友紀子は訝しげな顔を見せてからすぐにきりっと表情を引き締めた。
「あたし、お金で人を判断したりしないわ。そんな風にあたしを見ていたの?だとしたら悲しい。あたしね、誠実な人と結婚するって決めてたの。一生暮らしていくのには人柄が一番大切だわ」

 山野はじっと黙っていた。友紀子の言葉を意地悪く解釈すれば、遊ぶ男と結婚相手と分けているといえなくもない。
 何と応えていいか迷いつつ、彼女を見つめていたことが友紀子には返事と映ったようだ。立ち上がって彼の横に座るとしなだれかかってきて、
「いつもそうやってあたしを見ててくれたのね……」
顔が近付き、濡れた唇が半開きになって生暖かい息が洩れて山野をくすぐった。吸い寄せられるように口づけした。
(友紀子の唇!)
柔らかな体を胸に抱くともう制御は利かない。肉体の魔力に侵されていた。そのまま店を出て、導かれるようにホテルに向かった。

 その一週間後に入籍、一か月後には今のマンションに入居した。
慌ただしい中で常に頭の隅に釈然としない思いがあったのは、世間的な常識を踏まえなかっただけではない。気がつくとすべてが友紀子の筋書きで事が運んでいたからである。

 ホテルで挿入の体勢に入った時、閉じていた彼女の目がかっと見開かれた。
「結婚するのよね」
今まさに昂奮の頂点に行き着く直前である。
「うん……」
細かなことを考える状況ではない。その返事はセックスの一連の流れのようなものであった。そして埋め込み、折り重なって結婚が決まった。

 親に報告したのは入籍後のことだ。
「形式ばったことは意味がないわ。二人の気持ちが先よ。そう思わない?」
同意を求めているようでいて山野の意見が入る余地はなく、結論を押しつけていた。
 式も挙げないと言い張るのでさすがに揉めたが、結局言うままになった。何とか記念にと二人で写真を撮り、両家の親を交えて食事会で形を作った。だから披露宴もない。親からはずいぶん嫌味を言われたものだ。彼女の親も言いなりのように見えた。
 彼女の考えは、
「そんなお金があったら将来に生かした方がいいのよ」ということになる。


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