投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飼育
【ロリ 官能小説】

飼育の最初へ 飼育 6 飼育 8 飼育の最後へ

その(1)-7

 二人の生活が始まった。経緯に不本意なことはあったが、取り立てて不満はなかった。誰が見ても一級品の美女と結婚した満足感はあったし、リードしていく性格ではないことは自分でもわかっていた。友紀子に任せておいた方が万事うまくいく。そう思うことにした。

 しかし日を重ねるうちに心の一部に空白感を覚え始めた。それはいうなれば男の自尊心、あるいは征服欲とでもいったらいいか、満ち足りたものへの欲求が次第に芽生えてきたのである。
 生活の中で一つくらい優位に立ちたい。……それは夜の営みのことである。友紀子の主導権はセックスにおいても変わらなかったのだ。
 彼女が完全に身を任せたのは初めての夜だけだった。だがそれとても思い返してみると彼女がタイミングを計って腰を動かして迎え入れた感が強い。山野はその時挿入を試みて一度上滑りをしてしまったのである。すぐに友紀子の腰が下から上へと動いて先端が入り込み、そのまま重なって間もなく果てたのだった。その時は感激で何が何だか分からなかったが、あとから友紀子がうまく角度を定めてくれたのだと思い当たった。

 その頃、山野の性体験は数えるほどしかなかった。それもソープでのことだ。童貞を棄てることが出来たのもベテランのソープ嬢のおかげであった。泡の中で何度か扱かれて発射してしまった彼を、
「若い証拠よ。元気がいいわ」
やさしく導いてくれて大人になったのである。その後何度か通った。友紀子と付き合う二年前のことである。その女以外と接触はない。

 積極的な友紀子のセックスに山野は振り回されてばかりだった。彼への愛撫よりも自分が昇ることしか考えていなかった。突然声を上げたり、取りつかれたように悶えた。それ自体は行為として喜ばしいことなのだが、彼は素直に快楽の淵に飛び込むことが出来なかった。その一方的な昇り方を見るにつけ、彼には『妻』というより、数々の男を迎え入れて熟した『女体』として映ってしまうのだった。
 忘れかけていた噂が頻々と過った。
(こんな風に重役に抱かれていたのだろうか……)
うねる体に舌を這わせながら心にはさざ波が立った。
 
 さらに不満だったのは友紀子が愛撫の指示をすることであった。
「背中の真ん中辺り、そこから舐めて、下へゆっくり……」
「少し吸って、軽く、軽くよ」
「クリトリスはそっと舐めて……そう、いいわ」
言われるまま丹念に『愛し』、いく度か小さな頂きを越えた後、ようやく挿入の『許可』が出る。それも友紀子の具合によるのである。

 挿入してからも要求が続いた。初めは浅く、探るように、
「来て」と言われるとのしかかっていく。
 だが彼女のペースにすべて応じるのは難しい。敏感な体はまっしぐらに突き進んで、たいていは途中で耐え切れずに発射してしまう。
「ああ、イク」
「まだだめ!もうちょっと、ああ……もう……」
身を震わせて放出する彼の耳元に友紀子の溜息が吹きかかった。

 排泄のような後味であった。満足感はない。事後に決まって思ったのは、
(自分の『女』が欲しい……)
結婚して妻を抱いているのにそう思った。
(俺の胸で歓喜の嗚咽を洩らす女。自分の思うままに導き、組み伏せ、忘我の境を彷徨わせ、俺に縋ってくる絶頂に歪んだ顔を見つめるのだ……)
 山野が描く理想の展開である。なんと素晴らしいことだろう。友紀子がめろめろになって全身をぐったりと弛緩させて屈伏する姿を何度想像したことか。現実はまるで叱咤されているようなものだ。

 次第に友紀子が疎ましくなった。性欲は湧水のごとく限りないが、絡み始めてあれこれ指図されるのはうんざりだった。
 一度求めを拒絶したことがある。その時の友紀子の目は背筋が凍るほど恐ろしかった。呆然とした顔を見せた後、こめかみに血管を浮き上がらせて山野を睨みつけた。プライドを傷つけられた心底からの怒りだったのだと思う。
 
「今日は疲れてる……」
積った思いの欝憤晴らしの一言が相当な衝撃だったようだ。自ら美貌を自認してもいただろう。一流企業の顔として受けつけの花だった自分に恥をかかせたと思ったかもしれない。
 ひび割れた関係になり、そうなると恋愛感情が希薄だった二人の絆は脆かった。友紀子は外泊をするようになり、問い詰めても何も答えなかった。ある夜、帰宅すると家具も衣類もなくなっていた。テーブルに友紀子の印の押された離婚届が置かれてあった。 

 


飼育の最初へ 飼育 6 飼育 8 飼育の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前