投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『清子と、赤い糸』
【幼馴染 官能小説】

『清子と、赤い糸』の最初へ 『清子と、赤い糸』 3 『清子と、赤い糸』 5 『清子と、赤い糸』の最後へ

『清子と、赤い糸』-4

『……

「きよちゃん、しっとる? 今日、転校生くるんやって」
「そうなん?」
「しかも、男の子やと!」
「ほー」
 小学校の教室に来るなり、クラスで一番の仲良しさんの、美依子にそう訊かされても、清子はあまり関心が寄らなかった。
 赤茶けた髪を無造作に後ろでまとめ、リクルト・イーグルスの帽子を被り、そばかすと八重歯が特徴的な清子は、“女の子”であることに間違いはなかったが、男子顔負けの身長と身体能力もあって、本人も含めて、その意識が少し薄めだった。
(みーこみたいに、クラスの女子連中が、きゃいきゃい言うとるんやろなぁ)
 小学6年生になれば、誰が誰に片思いをしているとか、誰と誰が両想いだとか、そういった色恋模様に多分な関心を抱くようになる。
 また、おとぎ話のような“運命の出会い”に憧れを持つ年頃ということもあって、“転校生が来る”といううってつけのシチュエーションに、クラスがいささか興奮気味になるのも、よくわかることだった。
(ご苦労なことや)
 一方で、“男勝り”と周囲に言われて久しい清子は、転校生のことなど我関せずとばかりに、キラキラした表情で“どんな男の子やろねぇ”と想像力をたくましくしている美依子をよそにして、背中にしょっていたランドセルを机の脇に引っ掛けて、椅子に腰を下ろした。

 きーんこーんかーんこーん…

「おー、みんな、すわりやー」
 本鈴が鳴ると同時に、担任の男先生が教室に姿を現す。教壇にひとり立つ男先生だが、例の“転校生”はおそらく、教室のすぐ外に待機しているのであろう。
「ほれほれ、静かにせえよ」
 その存在を知っているクラスは、なかなかざわつきが収まらなかった。
「えーと、ほんじゃあ」
 それを、何とか制した担任は、ひとつ、もったいぶったような咳払いをすると、
「みんなも知っとるやろうが、今日は転校生がおる」
 と、お決まりのフレーズを挟んで、外にいる“転校生”を教室の中に呼び寄せた。
「はじめまして、岡崎まもるです」
 “転校生”は、クラスの中では、背丈が中の下ぐらいの、朴訥とした様子の男子であった。この時分では、背の大きさが、“カッコよさ”のバロメーターでもあったので、それで関心を失せた女子が大半だった。
(ゲンキンなやっちゃなぁ)
 清子は、男子を混ぜて、クラスの中でも三番目ぐらいに背が高いので一番後ろの席に座っている。故に、クラス全体の雰囲気を俯瞰できるので、高まっていた女子の関心が落ち着く一瞬というのを目の当たりにすることができて、思わず苦笑いしていた。
「ちゅうわけで、みんな、仲良くしてやってな。席は……清子の隣があいとるな。そこに座り」
「はい」
 担任の声に素直に反応して、岡崎少年は、壇上でもう一度一礼すると、そのまま教室の中を静かに移動して、清子の隣の席に向かってきた。
「よろしく」
「よろしゅうな」
 と、当たり障りのないやり取りをしてから、岡崎少年は席に腰を下ろした。その所作に、行儀のよさを感じて、清子は“ええとこのぼっちゃんかな?”と、一瞬、そう思った。
「ほんじゃ、今日の授業はじめるで。岡崎は、教科書もっとらんやろうから、隣の清子がよう面倒みたってや」
「ほーい」
 言うや、自分の机を岡崎のそれに引っ付けるように、早速移動する清子であった。この年頃の女子特有の、異性に対する緊張や物怖じは、当然ながら現時点の清子にはない。
「ありがとう。えっと……」
「みささぎ・きよこ、や。清子で、ええよ」
「清子さん、ありがとう」
「………」
 “さん”づけで男子に名前を呼ばれることが久しぶりで、少しだけではあるが、胸に動悸を感じた清子。
 ふと、三つ斜め前に座る美依子が、“きよちゃん、ずるいなぁ”という視線を向けてきたのがわかって、清子は“そんなこと、言われてもなぁ”と、困ったような笑顔を返しておいた。
(……でも、教科書いらんのと違うやろか)
 授業が進むにつれて、岡崎少年の学力がかなり高めであることに清子は気がついた。担任から答を聞かれて困った清子が、さりげなく助け舟を出されたぐらいである。
 休み時間が来る度に、岡崎の周りには人だかりが出来た。それを、淡々と受け止めながら、やはり淡々と冷静に捌き、物静かでありながら、諸事にそつのない様子を見せる岡崎を横目にして、清子は、
(転校ばっかりしとるからかな?)
 と、思うところがあった。人当たりが良さそうに見えて、どこか、一線を引いたようなところも感じていたのである。


『清子と、赤い糸』の最初へ 『清子と、赤い糸』 3 『清子と、赤い糸』 5 『清子と、赤い糸』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前