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『清子と、赤い糸』
【幼馴染 官能小説】

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『清子と、赤い糸』-5


 きーんこーん、かーんこーん…

 清子にとって至福の時間である給食タイムが終わり、しかも午後からは体育であった。
「よっしゃあ!」
 エネルギー満タンの状態で、もっとも得意とする体育ということもあって、午前中とは打って変わって、清子の張り切りようといったら、尋常ではなかった。
「今日は50m走と、ソフトボール投げの測定をするで〜」
「はい!」
 体育としては地味な課題であり、しかも、クラスは運動を得意としない連中が多い中にあって、清子のやる気漲る様子というのは、いささか滑稽なようにも見える。
「どりゃあ!」
「おー、さすが清子やな。飛ばしよるわ」
 女子ながらリトル・リーグのチームに入っている清子だから、ソフトボール投げでは、当然、クラスで1番…のはずだった。
「「おぉっ、すげえ!」」
「!?」
 清子の投げた最長到達点を、はるかに越える記録を出した者がいた。転校生の岡崎である。
 軽々と投げている様子だったのに、その指先から投じられたソフトボールは、矢を射たように見事な放物線を描いて、グラウンドの脇まで届いていた。
(あんなとこまで……)
 負けじと清子も、力んでボールを投げるが、一投目よりも記録が短かくなってしまった。
「ぐっ……」
 得意のソフトボール投げで大きな差を見せられた清子は、負けん気の強さが顔を出した。
「岡崎クン、50mは、ウチと走ってもらうで!」
「わかった」
 明らかな挑戦と挑発を、朴訥とした様子で岡崎は受け止めていた。
 にわかに発生した、“清子対転校生”の50m走に、ギャラリーがいつしか出来上がる。
「ほないくでー」
 “面白いことになっとる”と、内心笑んでいるのは、担任の男先生であった。上手い具合に、転校生がクラスに馴染んでくれる良い機会であると思う同時に、“勝気な女子と、寡黙な男子”という図式に、漫画のような展開を感じていたりもした。
「よーい……スタート!」
 腕が振られ、クラウチングの体勢をとっていた清子と岡崎が、同時にスタートを切った。直後の出足、数メートルは、全くの互角であった。
「………!」
 だが、20mを越えた頃から、清子は相手の背中を追いかけるようになった。必死に足を動かして追いかけるが、どうしてもその差は縮まらない。
「「おぉっ!」」
 そのまま、体ひとつの差をつけられて、清子は岡崎の後塵を拝した。学校の体育で、誰かの背中を見ながらゴールをするのは、久しくなかったことだ。
「も、もういっぺんや!」
「わかった」
 二度目の計測も、清子は岡崎に敵わなかった。むしろ、その差は広くなっていた。
「もういっぺん!」
「うん」
 計測は二度でよいのに、清子はその後、何度も岡崎に挑みかかった。しかし、その差が広がるばかりで、結局、5度の対戦のいずれにおいても、清子は岡崎をただの一度も追い越すことはできずに終わってしまった。
「………」
 ぜいぜい、と肩で息をする清子に反して、岡崎はとても涼しげである。
「岡やん、すげえ!」
「清子より足が速いヤツ、初めて見たわ!」
「5回も走っとるのに、最後のタイムがいっとう早いで!」
 この年頃において、運動が出来る男子は、それだけで人気が出る。たちまち男子のクラスメイトたちに岡崎は囲まれて、“岡やん”とか“まー坊”とか、早くも愛称で呼ばれるようになっていた。
「きよちゃん、大丈夫かぁ?」
 美依子が、まだ呼吸の収まらない清子のそばにより、背中をさすっていた。
「岡崎クン、身体そんなに大きくないのに、すごい運動できるんやねぇ」
 親友の体を気遣いながら、美依子の関心はやはり、岡崎に寄っている。男子たちに囲まれてしまったので、他の女子たちがなかなか近寄れない状況になったのだが、それは美依子も同じだったようだ。
「ま、負けた……ウチが……」
 そんな美依子の様子も知らず、背中をさすられながら、膝に手を置いたまま荒い呼吸を繰り返す清子であった。


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