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惚れ薬
【その他 官能小説】

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果肉甘いか酸っぱいか(1)-5

 ケーキにはすでに薬を仕込ませてある。苦心したが確実な方法をとった。
デパートに入っている有名店で買ったのだが、自宅用と言って包装紙も紐掛けも断った。その足でトイレに行き、一個を除いてすべて薬を垂らした。継ぎ目のシールを剥がすのに手間がかかったが、直後だったのできれいに取ることが出来た。一つだけシュークリームにしたのは俺の分だ。もし食べることになっても迷わないためである。他はイチゴのショートだ。うまくいくことを祈ってシールを貼り直した。

 食事をしながら、俺は内心舌を巻いていた。優花のことである。彼女の様子に微塵の動揺も見られないのだ。思いつめて沈んだ表情になるかと心配していたのだが、拍子抜けの感である。リビングに来る時などスキップをしながら入ってきた。
「なんです。家の中で。お客さまの前ですよ」
涼子にたしなめられてぺろっと舌まで見せる始末である。
 いまどきの子供というべきか、何食わぬ顔、といったとぼけた作為さえ感じられない。おそらく初めてのキスだと思われるのに何事もなかった振る舞いと笑顔。頬を染めていたあの緊張は何だったのだろう。
 俺は呆れながらもほっと胸を撫でおろした。


 「ケーキ食べたいな」
食事が終わって優花がおずおずと言った。俺と涼子の顔を交互に窺っている。持ってきたのは俺で許可は涼子にということのようであった。
(きた、きた…)
俺は逸る気持ちを抑えて心で手を叩いた。
「そんなすぐに食べられるの?」
「別腹よ」
「デザートだよね」
俺も後押しして優花に頷いた。
「じゃあ、いただきましょうか。正樹さんも召しあがるでしょう?」
「それじゃ、一緒に」
冷蔵庫から箱が取り出される。
(いよいよだ…)
淫乱な想像が頭を巡る。ああ、あの肉体を抱くんだ。そうだ、優花も…。どうなるんだ。

 「わあ、美味しそう。シュークリームが一個ある」
「それ、ぼくの分。これが好きなんで」
「それではこれは正樹さんの。優花、大好きなイチゴのショートでよかったわね」
「うん、あたし大好き」
しかしここでシナリオが狂ってきた。
 「あたしは後でいただくわ」
皿に取り分けながら涼子が言ったのである。
(なんで?…)
「ふふ、ママね、ダイエットしてるのよ」
優花がからかうように俺に笑いかけた。
「別に、そうじゃないわよ。お昼食べたばかりだから」
中年期になって贅肉が気になっているのだろう。しかし、
(これはまずいぞ)
優花だけ食べて涼子が正常のままだったらどうする。……
(困った…)
優花は目を丸くして食べ始めた。

 「美味しい。この店のパティシエ、有名なんだから」
「少しくらい大丈夫ですよ。ねえ優花ちゃん」
俺はことさら大口を開けてシュークリームを頬張ってみせた。
「食べないんだったらあたしがもっと食べちゃう」
「しょうがないわね。ダイエットじゃないんだから。でも、せっかくだからいただきましょうか。優花、半分食べてくれる?」
「うん、食べる食べる」
弱った展開だがどうにもならない。涼子が口にするだけよしとするしかない。だが、どんな具合に薬が散ったものか。特に考えずに垂らしたのでわからない。半分食べるなど想定外である。
(効果があればいいが…)
涼子の胸元や腰の曲線を盗み見ながら、これから起こるあらゆる状況を考えた。



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