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爛熟女子寮3−3
【学園物 官能小説】

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それぞれのハーモニー-4

 「志乃、何か弾いて」
(そんな…)
こんな時に無理だ。もう昇り始めているのに。不自然な体勢だけど上下運動は止められない。気持ちよくて、体の奥から快感が盛り上がってくる。こんなにがっしりとペニスを受け止めたのは初めてだ。
「うう」
私が声を洩らすと美和子の声が飛んだ。
「弾いて、弾くのよ」
私は動きを続けながら音階練習を弾き始めた。それが精一杯だった。
 ねちねちと音がする。頂上が近付いてくる。高まりによって身が引き締まり、腰の動きも快感に合わせてくねくねとなる。扱くように、錬るように、
(くう…)
堪らない。腹筋がきつい。だがそこから生まれる快感はあたかも光沢をもって広がっていく。
 動きが自然と速くなってパンパンと男の股間に打ちつけた。まるでスクワットだ。
「志乃、早くイッテ、交代よ」
突然美和子が顔を覗かせた。真っ赤になって切迫している。
(何で?)
「早くどきなさい」
驚いてピアノの指が止まった。
「ううう…」
男の声である。
「すごい…名器だ…だめだ」
男の腕が巻きついてきて、
「きゃ!」
とっさに立ち上がってしまった。
「ああ…」
男は前屈みになって呻いた。
 達する寸前の昂奮が一瞬にして醒めた。美和子の唖然とした顔。その眉間に刻まれた皺を見た時、私は張り詰めた緊張を感じて身を竦ませた。
(どうして…)
強い…はずの男が美和子を迎える前に果ててしまった。これまで屈服させられ続けてきた男。今年こそとリベンジを期していたのに……。美和子が交代してと言ったのは男の様子から事態を察したのであろう。
(どうなるの?)
彼女の『プライド』…。それは強烈な想いとして内に秘めていたはずだ。
『彼、強いの…』…手と口で…『女として傷つくわ…』…『だから今日はナカでイカセテやるわ…』……『今年が最後…』……。
 私は怖くて目を上げられなかった。
 男が立ち上がってズボンを穿く姿が見えて、その動作に紛れるように私もジャージを着ると何も言わずに部屋を出た。
 どう対処していいか、解きほぐしたものか、突然折れ曲がった感情の錯綜は、その時のの私には手の施しようがなかった。


 思い出が朝霧のように陽光の中に消えていった。
そろそろ11時のなる。母校の遠景から目を離すと室内に戻って料理の準備に取り掛かった。
 お昼はパスタだ。さっぱりとサラダ風にする。ゆでたパスタに野菜やハム、ゆで卵などをのせてドレッシングをかける簡単なものだが、けっこういける。フライドオニオンを添えるのがポイントになる。ワインも冷やしてある。
 夕食はビーフシチューで、肉は昨日から合間をみて十分煮込んである。きっととろとろになっているはずだ。ブロッコリーやジャガイモは煮崩れするのでレンジで加熱して直前に入れる。
 好きな人のために料理を作る。そして一緒に食べる。それは本当に楽しくて幸せなことだ。ふだんは1人だからたいていコンビニの物で済ませてしまう。料理って自分だけのためだったら工夫もしないし手もかけない。
 卵をゆでている間に野菜やハムを切り、ミニトマトを洗って具材を揃える。スライスしたオニオンを油でカリカリになるまで揚げて火を止めて、鍋に水を入れた。
(まだ早いな…)
12時の約束である。パスタは茹でてさっと水洗いして、直前の方がいい。
 冷蔵庫から缶ビールを出して喉を潤した。いったん消えた思い出がはぐれ雲のように過ってくる。
 調律師の一件以来、美和子はすっかり変わってしまった。私を避けるようになり、たまたますれ違って挨拶しても視線を合わせず、素気ない会釈をして通り過ぎた。
 全員入浴にも来なくなった。初めは生理かとみんなも思っていたようだが、2週続き、3週目になると、
「どうしたのかしら…」
さすがに話題になった。
「体の具合でも悪いのかしら」
由希までが首をかしげていた。
 考えられることといえばあの事しかない。
(それほどショックだったのかしら…)
それが原因だったとしてもみんなには言えない。
 それからさらに1週間ほどして全員入浴が中止になったことをサリーから聞いた。
「下條さんがそう言ったんだって」
由希から伝えられたのだった。
「どうしたのかな…」
「もうみんな仲良くなったからいいんだって。いい加減よね」
もちろんお誘いはない。私だけでなく同期の誰も声をかけられなかった。由希はどうだったのかは知らないが、彼女は夏休みが終わると寮には戻らなかった。退学したと他の科の先輩から聞いた。平日の昼間に荷物を取りにきたという。
「妊娠してたんじゃないかな…」
サリーはぽつんと言った。
「まさか…」
7月初めに会った時、いつもと様子が違っていたという。
「何がって言われても困るんだけど、激しさがなくて、ディルド使わなかったし…」
 私は由希のことよりも美和子を思った。
(あんなに燃えやすい体を持て余しているのじゃないかしら…誘ってくれれば…)
何度か部屋を訪ねようと思ったが、とうとう出来なかった。
 先輩を交えた金管部の結束は数か月で崩壊してしまった。でも、全員入浴は続いていた。同期4人の貸し切り湯。誰に気兼ねもいらない時間と空間。温泉旅行に来たみたいで楽しくて、楽しくて。みんなで戯れたものだ。翌年新入生が入ってきても私たちは4人だけの世界を守り通した。
 (秋頃のことだったか…)
お風呂から出て体を拭いていると、出入口のガラス戸に人影が映っているのに気がついた。
(下條さん?…)
間もなく見えなくなった。
(いまどうしているんだろう……)


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