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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻影-12




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うたた寝をしている。

それをぼんやりと自覚しながら、アズールは重い瞼を開くことが出来ないでいた。

魔術で疲労を消すくらい微睡みの最中でも容易いはずなのだが、どうもこの状態が心地よくて暫し余韻に浸っていたい。

調薬の報告書を上げなければ。いくら詳細に記憶していても、それを記録にしなければ仕事としては成り立たないのに。

シウの身体は未だに催淫剤に抗体を示さず、薬の作用を試すにはこれ以上ない効果と結果を残してくれている。

しかしそこが欠点でもあった。

慣れない故に、限界も広がらない。あまりしつこく続けてしまえば忽ち失神を起こしてしまう。

薬の濃度が試行の時間に比例してついてくるのだ。

強めに調合した薬でやはりあっという間に気を失ってしまったシウが目を冷ますまで、労るつもりで側に着いていようと思ったのだか。

安らかな寝息をたて始めた彼女の傍らで、ついついうたた寝をしてしまったらしい。

そのうちに、もそりと動く気配と共にスプリングが僅かに軋む音が聞こえてきた。

「・・・・アズール?」

緩やかに動き出した空気がアズールの髪を揺らす。

「ごめん、あたしまた・・・これじゃ実験も捗らないよな」

拗ねたような言葉を呟くシウに笑いたくなる気持ちを堪えて、アズールは瞼の先にいる彼女の影を追い掛けた。


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