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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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愛撫-1

 魔術師は普通、何者も敬わない。

それは己が世界を統べる唯一無二の存在であるという傲りから。そしてそれがこの世界の常であり、理とされているからである。

国を凌駕しのしあがった貴族も魔の力を持って生まれた者には敬意を払い、その地位すら並べなければならない。

それが例え貧困に喘いでいた商人の子供でも、である。

子は生まれ、力を確認された瞬間に権威を持つ。

この世に生を設けた瞬間から、理は着いて回るのである。

また一人、突然降ってわいた幸運に民は歓喜する。

それは人格までを変えるほどの変化。過酷な労働差別を虐げてきた貴族に我が子が肩を並べること、それは庶民にとってどんな高貴なワインよりも甘美なものであった。


その青年は平凡な中級家族に生まれた。


父母とも一般的な家柄で貴族の血も流れていなければ、歴代に魔術を使う者もいない。

平凡だった一族は皆、彼の誕生に驚いた。

父は息子を誇り、国からの祝賀を心から喜んだ。

母はいずれ手放さなければならない息子に浮かない顔をしたが、これまで以上に裕福となった家庭に喜ばないわけではなかった。

14になった力の保有者は、その力を国へ献上しなければならないというこの国独自の規則があった。


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