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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻影-21

 油断したら、声が裏返ってしまいそうだった。

無抵抗にだらりと凭れるアズールはシウに触れてこようとはしない。

「今、何か言った?」

「・・・アズール、あたし薬のせいで頭可笑しくなったのかも」

「え?」

「抜けてないのかな、なんかまたゾクゾクしてきた」

無知で正直というのは危ういものだなと、アズールは上を仰ぎ溜息を吐く。

薄皮一枚、剥がされてたように敏感になっていく肌を容赦なく這い回しておいて、自分が欲情しているのだと。

「シウ、抱き締めていい?」

「なんでそうなるんだよ。もう触らなくていいのか?」

「シウが俺を弄りたいなら別に構わないよ」

「弄るとかよく分からないけど、今日のアズール、なんか変だぞ?」

「そう?」

「うん、なんか、子供みたいだ」

子供にこんな忍耐力あって堪るか、と憮然に笑みが零れたがそれを声にすることはなかった。

強めに包み込んだ小さな身体はそれ以上力を入れたなら、崩れる暇もなく溶けて無くなってしまいそうだと思った。

――俺には・・・出来ない。

押し寄せてくる悲しい欲情をアズールは抱き締め、熱い吐息を滲ませ瞳を伏せた。


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