投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

溺れる爪痕の最初へ 溺れる爪痕 60 溺れる爪痕 62 溺れる爪痕の最後へ

幻影-13

 このまま眠っていたら揺すり起こすだろうか。それとも放っておくのだろうか。

そう思った矢先、椅子に腰掛けベッドに突っ伏していたアズールの身体がグイ、と引っ張り上げられた。

勢いよく前のめりに転がった胴体から半歩遅れて、投げ出すように足がシーツの上に横たわる。

その小さく華奢な身体の一体どこに、そんな力を隠しているというのだろう。

「・・・・シウ、痛いよ」

「えっ、あ、ごめんっ」

「なに、俺の首でも折りたかったの」

「馬鹿!違うよっ。そんな体勢じゃ眠りづらいだろうと思って」

「ありがとう。お陰で目が覚めたよ」

「うわー。性格悪っ」

ころころ表情の変わる幼い顔は見ていて飽きない。

それどころか、もっとずっと見ていたいとさえ思えてしまう。

例えば、目一杯の笑顔とか・・・・。

うっかり想像してしまったそれを、アズールはかぶりを振って遠ざける。

その瞬間、彼に襲い掛かるのは既視感という名の影に他ならない。

普段、どこにも現れないくらい奥底に沈めている影は、気を抜くとこうしてアズールの隙を突いては顔を出してくる。

これみよがしに笑う、少女の残像。

その影が色濃く浮き彫りになる前に、目の前のシウに視線を戻した。

「シウ、体調は?」

「ああ、うん。元に戻ったみたい」

「効くのも早いけど抜けるのも早いね。良い調子だ」


溺れる爪痕の最初へ 溺れる爪痕 60 溺れる爪痕 62 溺れる爪痕の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前