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蛇に睨まれた蛙
【フェチ/マニア 官能小説】

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エクスタシー-2

昨日の忌々しいエクスタシーが頭ん中から離れない。
いつもなら仕事をサクサクこなせているのに、全く身が入らないんだ。
「おい龍一君、ちゃんと話聞いてるか?」
得意先でも叱咤されるこの有り様。
「あっ!すみません」
この言葉を何回言ったのか数知れない。
「少し疲れてるんじゃないか。龍一君は真面目だからな。たまには休んでリフレッシュしたらどうだ?」
「ご心配かけてすみません。いえ、大丈夫です」
ちっとも大丈夫じゃないっつうの。俺にとってはこの上なく有り難い御言葉だったのだが、お客様から気を遣わせているようじゃサラリーマンとして失格だ。
「それではまた後日お伺いします。失礼します」
そう言って得意先を退館して青空の下に出た途端、俺の心はまた昨日のエクスタシーに蝕まれていた。
(あの生保レディー。確か聡美だったかな。また来ないものかねえ…しかし、見習いだからなあ。可能性は薄いだろう)

夕方になり、得意先まわりを終えて帰所したところ、事務所が何やら騒々しかった。
中に入ってみると、何てことだろうね…あの生保レディーというか、鎧を着た女戦士が居るではないか。聡美…俺の中で心臓が太鼓を叩き出し、オマケに股間も膨らんできやがった。もしもこのまま、あの女が寄って来たりでもしたら俺はこのまま理性を保ち続ける自信がない。
しかし、よく見ると少し様子がおかしかった。聡美は営業課長からこっぴどく叱られ、ひたすら頭を下げて謝っていたのだ。今にも泣きそうである。そんな光景を遠くから見ていた俺は、側にいる島田に聞いてみた。
「おい、何かあったのか?」
島田の話はこうだった。
事務所訪問にやってきた聡美は、たまたま席を外していた営業課長の机上に自分の鞄を無造作に置き、元々そこに置いてあった飲みかけのコーヒーを溢してしまった。それで、側に乱雑していた書類がびしょ濡れになってしまったって訳だ。何とも間抜けな話だぜ。
ウチの営業課長から長々と説教を受けた聡美は、肩を落としながら事務所を後にした。

(聡美…)

自宅に戻るなり俺は聡美から貰っていた名刺のメアドにメッセージを送った。
『先日、事務所でお会いした龍一です。少し保険の内容が気になって資料を持ってきて欲しいのですが。明日の18時30分には私しか居ませんので、その時にでもお願い出来ませんか』
勿論、こんなのは嘘だ。俺は聡美の強烈なフェロモンが忘れられないのである。我ながら愚の骨頂なことをやらかしてしまった。すると、暫く経って彼女から返信が来た。
『ありがとうございます。明日の18時30分にお伺いします』

そして明日がやってきた。
この日はノー残業デーだ。18時になれば社の者は一斉に退出する。俺もその1人なのだが、時間差を使って再度事務所に戻った。やはり誰も居なかった。

約束の18時30分…
廊下からヒールで歩く音がしてくる。その音は段々と大きくなり此方に近づいてくる。そして、事務所の前で止まる。

扉がカチリと開いた。


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